小さなまちのどこにでもある資源を魅力あるストーリーに変え、伝えるための12のコツ ステップ9  これだけはすべからず! 〜ガイドがやりがちな3つのタブーとは〜

菊間彰一般社団法人をかしや代表理事

2019.03.04愛媛県

小さなまちのどこにでもある資源を魅力あるストーリーに変え、伝えるための12のコツ ステップ9 これだけはすべからず! ~ガイドがやりがちな3つのタブーとは~
こんな渓流の前ではガイドの言葉は無力です(鈍川渓谷:今治市)

確実に伝える必要がある時、ガイドに注目してほしい時には、他のものを見せてはいけない

 ガイドが話をするときは、対象となるものを見せながら話すのが基本です。その場にないものごとを話してもイメージできないからです。見せることができなければ、フリップなどを使ってできるだけ可視化するようにします。

 しかし、タブー最後の3つ目は、これとは逆のパターン。

「確実に伝える必要がある時、ガイドに注目してほしい時には、他のものを見せてはいけない」です。  これはどういうことでしょうか?

 例えばこんなシーンがあります。

 海辺や川のガイドで、お客さんが水に入るツアーがあったとします。この場合、水に入る前に安全に関する注意をしっかりとする必要があり、これを「セーフティートーク」と言います。安全管理はガイドの基本なので、お客さんにきちんと話を聞いてもらわねばなりません。

 こういった場合は、時と場合にもよりますが、海や川が見えないところ、もしくは少し見えるちょっと手前の場所で、セーフティートークをするのです。

 なぜか? それは、川や海の前で話をすると、気が散ってガイドの話が耳に入らなくなるからです。想像してみてください。夏の暑い日、目の前にめちゃくちゃ気持ち良さそうな渓流があります。あるいは白砂のビーチが目の前にあったとします。今すぐにでも飛び込みたくなりませんか?

 そんな状況では、実物を目の前にするとそわそわして話に集中できません。特に子どもの場合は顕著です。目の前に魅力的なものがあると、ガイドの言葉などもはや耳に入らないのです。

 こういう場合は実物を見せずに、あるいは遠巻きに見える程度の場所で話すようにします。お客さんも落ち着いて話を聞くことができますし、遠巻きに見える程度であれば、話を聞きながらさらにワクワク感が高まって行くものです。

 まちなみガイドの例であれば、お祭りや縁日などがあります。お囃子や神輿や露店などの華やかで楽しい雰囲気の前では、ガイドの言葉などお客さんに届くはずもありません。こういう場合は縁日に行く手前で安全上の注意などをしておくようにしましょう。スリや置き引きに関する注意、はぐれた場合の集合場所などを事前に確認しておけば、安全に楽しく過ごすことができるでしょう。

自分の行動を振り返ってみよう

 いかがだったでしょうか? これら3つのタブーは、ついついガイドがやってしまいがちのことばかりです。しかし、そこをしっかりと見つめることでガイド技術は飛躍的に向上します。普段の何気ない行いを振り返って改善し、より良いガイドを目指しましょう。

<過去の連載>
ステップ1 小さなまちのどこにでもある資源を魅力あるストーリーに変え、伝えるための12のコツ
ステップ2 まち独自の魅力の見つけ方
ステップ3 ガイドのためのフィールド調査 事前に確認しておきたい4つのポイントとは?
ステップ4 「体験」を通じて伝える方法 「アクティビティ」を使ってみよう
ステップ5 ガイドに必要な「あり方」 大切な3つのスタンスとは
ステップ6 来るのはどんなお客様? 対象者理解に必要な5つの視点
ステップ7 お客さんとのコミュニケーション 自由に意見やアイデアが出る場づくり4つのポイントとは?
ステップ8 小道具の活用 おさえておきたい3つのポイントとは

著者プロフィール

菊間彰

菊間彰一般社団法人をかしや代表理事

1974年生まれ。「一般社団法人をかしや」代表理事。環境教育と自然ガイド(インタープリテーション)が専門。ロープワークやナイフワーク、火起こしなどアウトドアスキル全般も得意。20代はじめに猿岩石に影響されバックパッカーとして東南アジアを巡る。その後、富士山麓、沖繩、名古屋、新潟など全国で自然に関わる仕事をしたのち2008年より愛媛県今治市に移住「をかしや」を起業。自然体験のノウハウをベースとした、行政向け、企業向け、一般向け研修を多数実施。「まごころこめて、ほんものを提供する」がモットー。

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