小さなまちのどこにでもある資源を魅力あるストーリーに変え、伝えるための12のコツ ステップ6 ~来るのはどんなお客様? 対象者理解に必要な5つの視点〜

菊間彰一般社団法人をかしや代表理事

2018.12.06山口県

 5.身体的、知的、精神的ハンディキャップの有無

 5つ目となる最後の視点、それはハンディキャップの有無です。これを事前に把握しておくことは非常に重要です。なぜならば、お客さんの状態によっては通常のツアーが全く実施できないこともあり得るからです。例えば車椅子のお客さんがいた場合、段差のある通常コースでは実施できなくても、事前に把握していればコース変更などで対処できるかもしれません。

 身体的なハンディキャップの場合、お客さん自身が状況をよく把握しているため、事前に言ってくれる場合が多いものです。しかし、知的、精神的ハンディの場合、そうでないこともあります。例えば学校団体などは「事前に言うと受け入れられなくなるかもしれない」と考え、当日まで言ってくれないことがあります。

 以前私もこんなことがありました。

 当時私は富士山麓のガイドをしていました。青木ヶ原樹海と溶岩洞窟のガイドです。お客さんは主に修学旅行に来る中学生です。ハードなフィールドでの本格的な自然体験であるため、事前に先生との打ち合わせを行い、ハンディキャップのある生徒さんがいる場合、必ず申告してもらうようお願いしていました。

 打ち合わせを無事に終え、いよいよガイド当日となりました。しかし、驚いたことにハンディキャップを持っている子がクラスに何人かいるのです。先生に確認したところ、事前に言うと受け入れてもらえない可能性があるため、とのことでした。結局この日は、その場でコースを変更し、スタッフも専属のサブスタッフをつけて対応しました。たまたまスタッフが調整できたのでことなきを得たのですが、そうでなければ実施は不可能でした。

 このように、当日判明したのでは対応できないことがあります。ハンディキャップを事前に確認することは、ともすると失礼なように思われがちですが、逆なのです。拒否するためではなく、できるだけ前向きに受け入れるための措置なのです。あらかじめ伝えてもらえれば受け入れられる可能性は高くなります。ユニバーサルな社会へ向けての対応と考え、事前予約制を取っている場合、ハンディキャップを確認する仕組みを取り入れることをおすすめします。

お客さんは千差万別、対象者理解をしてキメ細かな対応を

 いかがだったでしょうか?対象者を丁寧に理解することは、質の高いガイドをする上で重要です。5つの視点を身に付け、お客さんも自分たちもハッピーになれる、より良いガイドを目指していきましょう。

<過去の連載>
ステップ1 小さなまちのどこにでもある資源を魅力あるストーリーに変え、伝えるための12のコツ
ステップ2 まち独自の魅力の見つけ方
ステップ3 ガイドのためのフィールド調査 事前に確認しておきたい4つのポイントとは?
ステップ4 「体験」を通じて伝える方法 「アクティビティ」を使ってみよう
ステップ5 ガイドに必要な「あり方」 大切な3つのスタンスとは~

著者プロフィール

菊間彰

菊間彰一般社団法人をかしや代表理事

1974年生まれ。「一般社団法人をかしや」代表理事。環境教育と自然ガイド(インタープリテーション)が専門。ロープワークやナイフワーク、火起こしなどアウトドアスキル全般も得意。20代はじめに猿岩石に影響されバックパッカーとして東南アジアを巡る。その後、富士山麓、沖繩、名古屋、新潟など全国で自然に関わる仕事をしたのち2008年より愛媛県今治市に移住「をかしや」を起業。自然体験のノウハウをベースとした、行政向け、企業向け、一般向け研修を多数実施。「まごころこめて、ほんものを提供する」がモットー。

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