小さなまちのどこにでもある資源を魅力あるストーリーに変え、伝えるための12のコツ ステップ12.ガイドの役割と意義 ~インタープリターになろう~

菊間彰一般社団法人をかしや代表理事

小さなまちのどこにでもある資源を魅力あるストーリーに変え、伝えるための12のコツ ステップ12.ガイドの役割と意義 ~インタープリターになろう~
外国人のガイドツアーの例。着物体験&地域との交流で新たな世界の扉を開きます(愛媛県)

 観光まちづくりの現場の方が実践するための「ノウハウ」と「あり方、心構え」に関する連載記事です。知識ばかりでずっとしゃべっているガイドではなく、参加者がのびのびと楽しみながら、そのまちを好きになっていくためのガイド手法をお伝えしていきます。ガイドがどうやって参加者にまちを楽しんでもらうか。そのためにやるべきことはどのようなことかについて、12ステップで解説します。

 みなさんこんにちは。愛媛県今治市を拠点に、ガイド活動やガイド養成研修を生業にしている菊間です。この連載もついに最終回となりました。1年というのもあっという間ですね。さて、最終回のテーマは「ガイドの役割と意義 〜インタープリターになろう〜」。1年にわたってお伝えしてきた「喋らないで、体験を通じて伝えるガイド」の手法。実はこういうガイドにはきちんと名前があります。「インタープリター」といい、そしてインタープリターが使う、今まで連載で紹介してきた数々の技術を「インタープリテーション」といいます。最終回である今回は、インタープリターがいることの意義や効果、求められる役割などについてまとめてみたいと思います。

インタープリターの意義

 私が考えるインタープリターの意義や効果は以下の通り三つあります。まずはそれをご紹介します。そのあと、各項目について詳しく解説していこうと思います。

 ①お客さん全てが「安心」できる場を作る、それによりお客さんが活発に発言したり積極的に活動したりできるようになる。

 ②お客さんが「今まで自分が知らなかった世界」を体験できるよう導く。知識や情報を押しつけるのではなく一緒に体験して、新たな世界の扉を開く。

 ③ともすると見落としてしまいそうな「何気ない」時間や空間の中に魅力を見いだし、それをお客さん自身に感じてもらうよう仕向ける。これにより、自分でも気づかなかった自分自身や地域の魅力を、自分で発見できるようになる。

インタープリターは、お客さん全てが「安心」できる場をつくる

 この連載で繰り返し言ってきましたが、ガイドはサービス業です。まちなみや歴史、自然や文化を紹介することはガイドにとっての「使命」ではありますが、それよりも大事なことはお客さんに楽しい時間を提供し、喜んでもらうことです。その上でまちや歴史のファンになってもらえれば、ガイドとしてのミッションコンプリート! と言えるでしょう。そのためには、まずお客さんが「安心」できる場をつくる必要があります。安心してリラックスできなければ楽しむことなんてできません。

 だからインタープリターは、まずお客さん全てが安心できる場つくりに専念します。気さくに声がけをし、会話を楽しみ、お客さん同士をつなぎます。ツアーの冒頭でそれぞれのお客さんがどこから来たか、簡単に自己紹介してもらうこともあります。お客さんのことを把握したいというのもありますが、それよりもお客さん同士が話をする「きっかけ」を提供するのが主なねらいです。

 「お客さん全て」というのもポイントです。ガイドツアーに参加するお客さんにはいろんな方がいます。まちなみや歴史が好きな方もいるとは思いますが、中には全く内容を知らずにたまたまツアーに参加した方、あるいは社員旅行や修学旅行、ツアー商品に組み込まれていたからやむなく参加したという方もいらっしゃるかもしれません。さらにお客さんは大人だけに限りません。家族連れのお客さんがいれば、子どもも楽しめるツアーを実施しなければなりません。ガイドはそういういろんなお客さん「全て」がリラックスできるような雰囲気をつくる必要があるのです。

 では、お客さん「全て」が安心し、お客さん同士の会話も生まれ、積極的に楽しむ「場」ができたら何が起こるでしょうか? それは、お客さんが主体的にツアーに関わってくれるようになるため、全体に一体感が生まれるようになります。初めて会ったお客さん同士がまるで10年来の友人のように仲よくなります。実際に、ツアーで出会った家族がそれ以降ずっと友達づきあいをしているという例はいくらでもあります。それどころか、ツアーで知り合った男女がその後つきあい始めた、という例すらあります。本当に安心できる場、リラックスできる場というのはそれほどの威力があるのです。

 余談ではありますが、こういったインタープリターとしての「場づくり」のスキルを生かし、私は婚活イベントのコーディネートも多数行っています。参加者同士の信頼関係を丁寧につくり、リラックスできる場がつくれればカップリング率も自ずと上がるものです。インタープリテーションを学んで得られる効果は、ガイドツアーに限らず非常に応用範囲が広いものなのです。

小さなまちのどこにでもある資源を魅力あるストーリーに変え、伝えるための12のコツ ステップ12.ガイドの役割と意義 ~インタープリターになろう~
お客さん「全て」が安心して仲良くなれる場をつくりましょう

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