連載 「地域ブランドのつくりかた」成功のための12のハードル~その4.「地域らしさ」の共有ハードル、地域ブランドづくりで大切なのは魅力ある地域らしさ

福井隆東京農工大学大学院客員教授・地域生存支援有限責任事業組合代表・NPO法人エコツーリズムセンター理事

福井隆 地域ブランド
「南の島でバカンス」といえば、多くの日本人がハワイを思い浮かべるだろう。写真はハワイのワイキキビーチ

 前回は、ブランドとして認知される意味とその成果認識の違いについて述べました。今回は「地域ブランド」づくりにおいて最も大切な「地域らしさ」をブランディングの背景として価値を生み出す(「欲しい」「行きたい」を生み出す)ことについてお話をしたいと思います。

どうすればお客さまに選ばれるのか

 実際の競争市場において、商品を販売することや観光でお客さまに来ていただく現状を見ると、なかなか「スペックや機能」で差別化しても選んでいただけない、ましてや「安い」だけでは選んでもらえない状況が続いています。これは、「おいしい」「いいモノ」「すばらしい自然」などと呼び掛けても簡単には動いてくれないのが現状のマーケットだということです。

 そんな状況にもかかわらず、多くの人たちの心の中には「いいモノをつくれば売れるはず」という思い込み(ものづくり信仰)が幅を利かせています。モノは溢れ、欲しいモノが少ない時代には「良くて当たり前」という原則が働いており、行動につながる何らかのきっかけや大義が必要になっています。それではどうすれば良いでしょうか、どうすれば選んでもらえるか、実際に人気の商品や場所(ディスティネーション)から考えてみましょう。

 久しぶりに休みがとれそうなので、どこへ行こうか。せっかくの長い休みなので好きな人たちとゆっくりしたい、できれば南の島にバカンスにでも行きたいと考えた時、多くの日本人がハワイを行き先として選択しています。どうしてでしょうか? あるいは、「オイシイモノでも食べたいなぁ~」と考えた時、高級な夕張メロンや越前ガニ、松坂牛、パルマの生ハムなどが目に浮かびませんか。

 このように、人気になっているモノやコトを見てみると「地域名」がついているケースが多く目につくようです。ハワイに行きたい、それは南の島でのバカンスイメージであり、具体的には白い砂浜にヤシの木、サーフィンをする人がいて豊かなビーチリゾート文化がある地域として人気になっているわけです。

 言い換えると、白い砂浜やサーフィン、ヤシの木、ロコモコ、マカデミアンナッツなどが象徴するビーチリゾート文化が「ハワイらしさ」として認識され人気となっているのです。パルマの生ハムを見ても、三ツ星レストランなどで使われる最高級生ハムは、ローマ時代からハムづくりに適した風土と歴史を持つパルマが良いと多くの人に認識されているわけですね。

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