「地域ブランドのつくりかた」成功のための12のハードル ~その3.あいまいな「ブランディング成果」というハードル~

福井隆東京農工大学大学院客員教授・地域生存支援有限責任事業組合代表・NPO法人エコツーリズムセンター理事

2018.07.23

その1.「市場競争」の中でブランディング事業を行うということ
その2.ブランディング、なぜ必要?「目的の共有とブランド定義づくり」のハードル

地域ブランド 福井隆 東京農工大学
島根県松江市にある玉造温泉は団体客の減少により入込客数が落ち込んだが、地域のDNAを活かして若い女性をターゲットにした事業に力を入れたことで、現在は年間を通じて若い女性が訪れる温泉街に変貌した(詳細は3ページ目)。写真は玉造温泉の夏まつりの様子
写真提供:一般社団法人松江観光協会

 これまで、2回地域ブランディングにおける事業主体の大切さ、そして目的と目標を共有した上でブランド定義を持つことの大切さについて述べてきました。加えて、地域ブランディングの成功には、二つのステージがあることを説明しました。一つは、地域にあるさまざまな資源そのものがブランドになる、すなわち地域資源がブランドになる姿。二つ目は、「京都」や「プロバンス」のように地域そのものが信頼されブランド地域になる姿でした。そして、ブランド化とは京都の老舗の“ノレン”のように信頼を積み上げていく作業であることも述べました。今回は、目標であるブランドになる意味についてのお話をしたいと思います。

地域ブランド 福井隆 東京農工大学

売上が上がることがブランド化の成功とは限らない

 ところで、地域にある特産品に名前をつければ「地域ブランド」になるのでしょうか。あるいは、国などの認定や商標登録がされれば「ブランド」になったと言って良いのでしょうか。どうやら多くの取り組みで問題なのは、「ブランド」として認められることがどういうことなのか、そして、ブランディングの成果が共有されていない、ということではないでしょうか。今回はこの問題、ブランドの成果が共有されていないために生じてしまう「あいまいな事業成果」というハードルについてお話をしたいと思います。

 難しいですね、事業関係者にとって「ブランドって何」、とは今さら聞けません。また、国などの補助金を利用したブランド化事業では、KPI(重要業績評価指標)として売り上げを設定することがほとんどです。それは、売り上げという指標が一番分かり易く、費用対効果を図り易いからなのでしょうが、私は、“人々から信頼を得るというブランド成果”、すなわち“定性的な評価を見える化すること”が必要だと思うのです。

 当り前ですが、この認識や目標、成果が異なると取り組む事業の内容も異なってきます。多くのケースでありがちなのが、地域の特産品や眠った資源に着目して新商品を開発し、パッケージデザインなどで「付加価値」を付け、プロモーションとして都会のフェアーなどに出店することによって有名店等に取り上げてもらう、そして、結果的にその商品が売れ、売上高の向上を狙うということです。この商品は、これで「ブランド」になったと言えるでしょうか。「いいじゃないか瞬間的にでも『売れれば』」という声が聞こえてきそうですが……。

 ブランドとして認知されることは、〇〇の商品は(相対的に)良いものと思ってもらえ、継続的に購入されることにつながるのです。それこそが、皆さんの本来の目標ではないでしょうか。瞬間的に評判を獲得し、売り上げを上げることだけではブランド化の成功とは言えないでしょう。もちろん、よくあるやり方が間違っているわけではありませんが、目的や目標など、成果をどこに置くかによって、やるべきことが変わるのです。

 「ブランド」づくりが目標であるのなら、少なくとも継続的に、ターゲットとなる人たちの心の中に〇〇の商品の「らしさ×良さ」を創り上げる事業努力が必要です。

 ここでは、目的を「地域の持続のためブランド化を図ることによって地域を活性化すること」として話を進めます。

 

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