持続可能なまちづくりを叶える「地域まるごと宿」 ―アースキューブジャパン中村功芳さんインタビュー

中村功芳NPO法人アースキューブジャパン代表理事

2017.11.21広島県

9月22~24日「地域でなりわいを創る合宿」@広島

 生き様をより実践的に具現化させていくプロセスを教えるのが「地域でなりわいを創る合宿」である。ここからは合宿の概要を紹介していきたい。

 中村さんやコーディネーターの山田千裕さん、広島や岡山、全国から来た講師陣のもと、12名の参加者が集まった。中には九州や千葉といった遠方から訪れた人も。ゲストハウス開業を目指す人だけではなく、自分の人生を生きたい、地域の交流拠点を作りたい、何かアイデアの参考に得たい、とさまざまな目的を持って参加していた。

 中村さんの講義では、ゲストハウスの成り立ちや情報交換の宿、地域まるごと宿などについての話があり、印象的なフレーズが次々と飛び出した。

「昔から住んでいる地域の人が喜んでくれるまちづくりが大切」

「子どもが憧れる仕事をつくる」

「人生をかけてやりたいことができると成功。その基準は1万時間考えてもワクワクできるかどうか。10歳から15歳の次の世代がやりたいなりわいをつくれたら、まちは活性化する」

「面白いことをやっているところには人が集まります」

 今までの観光の概念を覆すかのような中村さんの言葉に皆さん熱心に聞き入っていた。

合宿1日目の会場は公民館。できるだけ地域に溶け込んだ場所を会場にし、神社の社務所や公民館など日によって会場を変えている
合宿1日目の会場は公民館。できるだけ地域に溶け込んだ場所を会場にし、神社の社務所や公民館など日によって会場を変えている

 その後、中村さんと山田さん、さらに講師陣でいくつかのグループに分かれ、一人ずつ自分があらかじめ考えてきた計画を発表した。

 中村さんが問いかけたのは、自分が一番やりたいことか、その地域のオリジナルであるかということ。

 皆さんそれぞれ自分の思いを熱くぶつける中、中村さんや講師陣から「本当にやりたいこと、本当に好きなのは何?」「その地域でなくてはダメなこと?」などの質問が飛び交う。徹底的に自分のやりたいこと、面白いと思うことを突き詰めていく作業が大切だという。
 また、時には「ひとつ立ち上がればあとは自然にできるから最初の一歩が大切」とアドバイス。その一歩は何がいいかと一緒に考え、グループ内で話しあっている間に意外なアイデアも形になっていった。

グループで話し合ううちに、自分が本当にやりたいことが見えてくる。計画を突き詰めて自分の未来を具体化する
グループで話し合ううちに、自分が本当にやりたいことが見えてくる。計画を突き詰めて自分の未来を具体化する

 そのアドバイスを基に、計画を突き詰め自分の未来を具現化する作業が始まった。りんごの木をゲストハウスやなりわいに見立てて、地域の歴史や宝、自分にしかできないことといった根の部分、考えられる課題とそれをクリアし成功させる幹の部分、3年後の未来の枝や葉の部分などを書き込んでいく。
 このプロセスをきっちりさせておくこと、最終的にはこのなりわいができて、地域のどんな問題が解決したのかを考えることが重要だという。

 想定顧客の暮らしの美の設定や計画の具体案、クラウドファンディングといった資金面の相談なども踏まえ、「誰に何を伝えるためにどんなコンセプトを打ち出すか」を考えながら自分のプランを練り上げていった。

 最終日にはそれぞれグループごとに発表して感想を述べ合った。最初は曖昧だったが方向性が固まった人、本当に自分の好きなことに気付かされ、当初の予定とはまったく別のプランになったりした人など、皆さんのプランに対する自信と熱気がほとばしっていた。
 さらに懇親会も含めて仲が深まり、同じような思いを持った仲間と出会い、今後の協力を約束し合っていた。

 発表後、それぞれ感想を述べた。

「講師陣に感謝」

「自分の心のパンドラの箱が開かれ、自分のことを知ることができた」

「自分の好きなことをやっていいんだといわれて嬉しかった」

「同じような仲間と出会えて嬉しい」

 初日とは明らかに変わった顔つきが、不安を希望の未来に変えた充実した3日間だったことを物語っていた。

 最後に講師陣もそれぞれアドバイス。株式会社ようびの代表取締役大島正幸さんは「この3日間は魔法です。いつもの生活に帰ると魔法が解けるので、それまでに最初の思いをフェイスブックなどにあげてください」。

 中村さんは「オリジナルが大切だと思います。それを実現したときに日本中から見に来てくれるはずです。今日は始まりです。みんなの想いから生まれた祭りができればいいなと思います」と締めくくった。

 中村さんの推進するゲストハウスやなりわいは、それを手掛ける人にとってはその人の生き様をつきつめ明らかにする場であり、「自分のやりたいことを実現する」ための場づくりでもあると感じられた。数年後にはそれぞれの地域で花を咲かせ、大きな実りを生んでいるに違いない。

今年6月にオープンした「広島ゲストハウス縁」。今回の合宿は、アースキューブジャパンとゲストハウス縁が共同で主催
今年6月にオープンした「広島ゲストハウス縁」。今回の合宿は、アースキューブジャパンとゲストハウス縁が共同で主催

(取材・文/川西由香理)

取材対象者プロフィール

中村功芳

中村功芳NPO法人アースキューブジャパン代表理事

古民家活用、地域おこし協力隊のメンター、DMO やインバウンドに関する講演やセミナー等全国で活動している。主催する「地域と生きるゲストハウス開業合宿」「地域で生業をつくる合宿」では、全国で開業した人が100名を超え、全国モデルになるまちづくりの拠点や生業を多く輩出し、成功率が最も高いといわれる合宿をプロデュース。自らも、地域活性化のため、空き家を活用してカフェやゲストハウスの運営を始め、わずか3年で世界52カ国、3年間で120,000人以上が集まる地域発信の拠点へと成長させ世界に発信した。2015年にはツーリズム EXPOジャパンにて観光庁長官からその取り組みを表彰された。

ライタープロフィール

川西由香理

川西由香理

ライター。株式会社よつば編集広告事務所

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