持続可能なまちづくりを叶える「地域まるごと宿」 ―アースキューブジャパン中村功芳さんインタビュー

中村功芳NPO法人アースキューブジャパン代表理事

2017.11.21広島県

持続可能なまちづくりを叶える「地域まるごと宿」 ―アースキューブジャパン中村功芳さんインタビュー

 東京五輪に向けてインバウンド熱も高まる中、外国人を含めた個人旅行客の間で人気を集めているのがゲストハウスである。ゲストハウスはキッチン、シャワー、トイレ共同の素泊まりの宿で、気軽に利用でき、旅行者同士あるいは旅行客と住民が交流できる点が人気の秘密だ。10年ほど前は国内にわずか10軒ほどしかなかったが、今では全国各地に800軒ほど存在するといわれている。

 そのゲストハウス開業を支援する団体として注目されているのがNPO法人アースキューブジャパン。代表理事の中村功芳さんはまだゲストハウスの存在があまり知られていなかった2010年に、地域の住民と一緒に旅人をおもてなしするゲストハウスを岡山県倉敷市で開業した。
 今では、これからの日本の地域活性化のモデルといえるDMOのモデルの一つ「地域まるごと宿」やゲストハウスの開業を支援する「地域と生きるゲストハウス開業合宿」「地域でなりわいを創る合宿」などを全国各地で開催。その後、全国を回り100カ所以上のゲストハウスのプロデュースに関わり、日本のゲストハウスのムーブメントを起こした。

アースキューブジャパン代表理事の中村功芳さん
アースキューブジャパン代表理事の中村功芳さん

 今年9月22日~9月24日に2泊3日の日程で、広島にて「地域でなりわいを創る合宿」が開催された。今回、その合宿にお邪魔して、中村さんの思い、地域資源の見つけ方や生業の育て方についてお話をうかがった。記事の後半に今回の合宿の様子も紹介する。

9月22~24日「地域でなりわいを創る合宿」@広島
9月22日から24日まで3日間にわたって開かれた「地域でなりわいを創る合宿」@広島

 取材前、中村さんが「私が伝えているのは単なる観光地ビジネスではありません。観光地になると、まちや暮らす人は消耗してしまいます。大切なことは、暮らす人の心の豊かさです。それがあれば、経済的な豊かさも後からついてきます」とおっしゃったのが印象的だ。

 実際、取材を通して見えてきたのは、従来の観光地ビジネスとは一線を画し、サスティナブルな、心の豊かさを求めた宿とその先にある持続可能なまちづくり。
 それを体現したのが地域まるごと宿であり、そこには従来の消費型観光から脱却した生産型観光という地域活性化への新たな展望が開けていた。

地域の長い営みの中で生まれた「暮らしのアート」が地域の宝

 中村さんが2010年に倉敷市でゲストハウスを立ち上げたのは、旅先で観光も何もせずのんびり過ごしたとき、これが本当の贅沢、心の豊かさではないかと感じたのがきっかけだったという。

 中村さんはゲストハウス運営の傍ら、倉敷でまちづくりの活動に携わる中で、観光に対する危機感を抱くようになった。

中村:「日本の観光地は客が押し寄せると地元企業ではない大手のホテルチェーンが進出してきます。ホテルでは中で食事、買い物、入浴が集約できてしまうため地元の商店街が衰退していきます。
 しかし、反動で観光客が減少し始めると、ホテルは撤退し、廃墟だけが残されます。これでは地域の人は幸せにはなりません。持続可能な観光地は、地域の人の暮らしの笑顔が大切なのです。
 実際、ある地域で旅行客が増えてまちはにぎわったものの、家賃が高騰して地域住民が住めなくなり、20人いた住民が3人に減少したケースもあります。まちは住民のためにあるべきなのに、これではまちの人が幸せになったとはいえません。
 サスティナブルな住民の笑顔、第一村人の笑顔が最も大切です。しあわせ生産型のまちづくりにしなければなりません。」

 ではまちの人が幸せになるのはどうすればよいのか。中村さんは数字にとらわれず、そして見える観光だけでなく見えない暮らしの美を残すことが大切ではないかと考えたという。

中村:「以前、刀鍛冶を家業としている家に5大陸それぞれの外国人の方を案内したとき、『観光地の刀鍛冶体験なら3,000円でも行かないけど、ここの体験なら6万円でも安いと思う』と喜ばれました。海外から来た人は本物を見たいのだと気づきました。
 その土地に根付いている暮らしの豊かさこそ地域の宝ではないかと感じました。それは作られたアートではなく、その土地の成り立ちの歴史や先人たちの長い営みから必然的に生まれた暮らしのアート、つまりその土地のオリジナルな宝だからです」

先人たちの長い営みから生まれた暮らしのアートが本当の地域の宝
先人たちの長い営みから生まれた暮らしのアートが本当の地域の宝

第一村人の笑顔

 まちの先人や先輩、丁寧な暮らしをされてきたおじいさんやおばあさんが尊重され、第一村人の笑顔になるようなまちづくりこそが、まちの人の幸せにつながるのではないかと考えたのである。

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