ロケ誘致で地域活性化! 地域を巻き込むロケツーリズム

山田実希雑誌『ロケーションジャパン』編集長

2017.02.21

ロケツーリズム
綾瀬ロケーションサービスのメンバー

4つの指標―3:地域の変化

 ロケ誘致によって地域にどれだけの有益な変化が起きたかを、広告換算効果や経済効果、観光客の増加数など、具体的な数値化を行い、地域住民に情報公開を行うことをいう。

山田:地方議会や住民の理解を得るためにも、観光客がどのくらい増加したか、メディアへどのくらい露出したか、グッズやお土産がどのくらい売れたかなどを数字で示し、効果があったことを伝える必要があります。

 ロケ誘致の効果はほとんどが感覚的なものだ。それを数字などではっきりと示すことで、議会や住民も効果を実感する。地域全体に協力してもらうためにも、効果があることを明確に伝えなければならない。

山田:ロケツーリズムに関するフォーラムを全国各地で開いていますが、そこでロケツーリズムをやってみたい方に手を挙げてもらうと必ず数名はいます。まずはその方たちで始めてもらうのです。そういう方は、モチベーションも高く、組織の核になりうる方です。その中に必ず自治体職員も入ってもらい、官民一体の組織として動き出します。

 組織が積極的に活動し、地域を引っ張っていくことが、住民の興味を引くためにも協力者を増やすためにも大切なことだ。協力者が増えれば、ロケ関連のツールを活用する方法も変わってくる。

【綾瀬ロケーションサービスの例】
 ロケ地マップの市民への配布、シンポジウムや市の広報誌でロケーションサービスの活動を伝えることで、市民へ活動の状況を発信している。エキストラ、炊き出し、ロケ弁などは、市民に協力してもらい、撮影に参加することを促しているという。

4つの指標―4:支持率

 一般の方にどのくらい支持されているか、その場所に行きたいかを表す指標である。ロケ地としての魅力、まちの魅力を発信して、ファンを増やしていくことが支持率の確保につながるだろう。

 4つの指標のうち、「3:地域の変化」は特に重要だ。地域を巻き込んで協力者を得ることで、撮影サポート度(エキストラの増加や炊き出し協力)、行楽度(観光客へのおもてなし)を向上させることができる。各地域でつくられたロケ誘致のための組織が、独り相撲を取っていたのでは成果は上がらない。ロケはあくまでもきっかけであって、ロケツーリズムの目的は地域を活性化することである。
 例に挙げた綾瀬ロケーションサービスは、発足から約3年となる現在、撮影に関する問い合わせが700作品、そのうち撮影が決定した件数が80作品を超えている。今年公開の映画も控えているという。

ワンシーンでも積み重ねが重要

 人気作品のロケを呼び込めた場合でも、その1作品に頼りすぎてはならない。いくら人気の作品であっても、いずれは新しい作品に注目が移ってしまう。

山田:大きな観光効果として知られている大河ドラマでさえも効果は1年強と言われています。そのため、新しいロケをどんどん受け入れていくことが大切です。聖地として残していくことも大切ですが、そればかりに頼るのではなく、新しい作品を呼び込んで知名度を上げ、何もしなくてもロケや観光客が訪れるようになることを目指してほしいのです。

 また、「ワンシーンしか撮られなかった」「地名も出ないのでは意味がない」などという悩みを抱えている自治体もある。そのワンシーンの積み重ねが大切だと山田さんは語る。

山田:ワンシーンを積み重ねることで、例えばロケ地マップを作成する際に多くの作品が撮影されていることを発信できます。何ごとも活用次第で変わります。コツコツと続けていくことで、大きな作品が舞い込んできたときにその経験を活用することもできます。そのときに地域との信頼関係ができていれば、地域全体がその作品に協力することもできるでしょう。

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