地域おこし協力隊が円滑に活動し、定着するためには

千田良仁一般社団法人村楽 代表理事

2016.06.01

受け入れ自治体は制度を正確に理解し、活用しよう

 全国各地で移住を推進する動きが加速しており、地域おこし協力隊制度を活用する自治体数は444自治体(2014年度)から673自治体(2015年度)に急増し、今年度にはほぼ倍増すると見込まれる。

 JOIN(移住・交流推進機構)の地域おこし協力隊の募集サイトでは、常時100件以上の募集が行われており、自治体間の競争は激化している。しかし募集案件を見ると、業務内容が非常にぼんやりとしていて、地域の売りも「食べ物がおいしい」「自然が豊か」「人がやさしい」などどの地域も一緒で、志望者は、地域おこし協力隊となってどのような活動が行えるかのイメージが持ちにくいものが多い。その結果、志望者は一般的な求人サイトのように月収や条件面で比較することになり、知名度がある、便利な都市部といった特定の案件に応募が集中しやすい構造となっている。中には写真がゆるキャラ、募集要項がよそのコピーでまったく採用意欲を感じない募集案件もある。

 なぜこのようになってしまうのだろうか? 特に隊員の雇用形態については、自治体の臨時職員や嘱託職員の雇用形態に準拠するところが多く(その方が前例があり楽なので)、その結果、副業の禁止や出勤簿の提出など本来の協力隊の業務にそぐわないものになってしまったり、地域から町の臨時職員として見られるなどの問題から、うまく活動が進まない事例もある。

地域おこし協力隊が円滑に活動し、定着するためには

 本来地域おこし協力隊制度は、特別交付税措置による国から地方自治体への財政支援であり、いわゆる補助金ではない。「都市地域から過疎地域等の条件不利地域に住民票を移動する」という要件を満たせば、隊員一人あたり400万円を上限に国から特別交付税が入ってくるという制度であり、その運用や雇用形態、活動内容についてはかなり自由度が高い制度である。まずは地域の将来ビジョンを描き、それを実現するための協力隊員の役割を明確化したうえで、業務内容に見合った独自の協力隊設置要綱を作成し、活動しやすい受け入れ体制を構築することが重要である。制度ありきで始めるのではなく制度を熟知し活用する、ここに受け入れ自治体は知恵を絞ってほしい。横並びの募集が大半を占める中、独自の制度設計と地域ビジョンを作成すれば他との差別化にもなり、その熱意を受けた良い人材がおのずと集まってくるはずである。

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