東京都八王子市でのMICE誘致における「観光要素」の寄与可能性 — ゼミナールでの教育活動を通じて —

古本泰之杏林大学観光交流文化学科准教授

2019.09.05東京都

八王子の観光魅力度調査

東京都八王子市でのMICE誘致における「観光要素」の寄与可能性 — ゼミナールでの教育活動を通じて —
「八王子まつり」、八王子市、クリエティブ・コモンズ・ライセンス表示2.1

東京都八王子市でのMICE誘致における「観光要素」の寄与可能性 — ゼミナールでの教育活動を通じて —
「秋の高尾山」、八王子市、クリエティブ・コモンズ・ライセンス表示2.1

 今回の研究で扱った東京都八王子市は、都心部からのアクセスの良さに加え、京王八王子駅・JR八王子駅双方からほど近い明神町地域に2021年度に設置される「産業交流拠点」(仮称)によって施設面が充実する。そのような背景から、新たな地域振興の切り口としてMICE誘致に力を入れている。

 ところで、観光庁(2013)の資料などでは、経済波及効果が約1.1兆円(観光庁, 2018)と言われるMICE事業において「ホスピタリティ・観光要素」が重要であることが指摘されている。さらにこの要素の中で「観光魅力・資源」「ナイトライフ」「ユニークプログラム」「エクスカーション」などが重要なポイントとして挙げられている。これらを発展させるという点において、本学のような観光系学科が果たせる役割があると思われる。

 その一方で、既存研究や本研究を通じたMICE関連団体へのヒアリングなどを踏まえると、MICE誘致においては、施設の充実度、交通アクセス、言語、地域における柔軟な受け入れ体制といった多様な要素が関連しており、「ホスピタリティ・観光要素」単体が誘致活動の結果に強く影響することは想定されにくい。

 ただ、八王子市において上述のようなハード面での整備が進む背景を踏まえ、現段階でソフト面としての「ホスピタリティ・観光要素」を検討しておくことは、首都圏において有力なMICE都市となる可能性を高める上で重要であると考えた。

 そこで本調査・研究では、「八王子市でのMICE誘致における観光要素の可能性」を「ユニークベニュー」「プレ・ポストコンベンションツアー」の学生による企画立案という切り口から検討することを試みた。

 具体的には、まず国内外における既存事例の収集と分析、八王子市内観光資源の視察調査、英語圏・韓国語圏を対象とした八王子の観光的魅力に関するウェブアンケート調査などを基にMICE関連プログラムに活用可能な八王子市の観光資源分析を行った。次にその結果を踏まえ、プレ・ポストコンベンションツアーの企画案4種類・ユニークベニューの企画案2種類を造成した。

 造成に関しては、八王子観光コンベンション協会や八王子市役所に加え、DMO六本木や観光庁といった地域外の関連団体(総計37団体)に御意見をいただいた。その上で、英語圏・韓国語圏を対象とした2回目のウェブアンケート調査を「造成したモデルツアー・ユニークベニュー案の魅力度」をテーマに実施するとともに、八王子市内外の関係団体に提示して改めて御意見をいただき、その結果を受けた修正案を最終発表用の提案として仕上げた。

 なお、これらの取り組みは基本的に全て学生たちが中心となって行うこととし、筆者は「アドバイザー」として最終発表まで伴走する立ち位置を取った。この教育的効果と課題については改めて振り返りたい。

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