着地型観光情報のオープンデータ化による活用

奥野拓公立はこだて未来大学システム情報科学部准教授

着地型観光情報の発信の現状

 スマートフォンの普及に伴い、観光ガイドブックを持たずに観光地を訪れる旅行者が散見されるようになってきた。媒体の電子化とモバイル化により、地方自治体や観光協会などが発信する着地型の観光情報を低コストで無制限に提供できる環境も整った。
 しかし、観光客の立場から見ると、必ずしも満足できる状態ではない。

 例えば、ある観光スポットを訪れている観光客が、その場所に関連するエピソードや近隣の飲食店について知りたい場合、求める情報にたどり着くためには試行錯誤が必要となる。

 着地型観光コンテンツはテーマ性が強く、テーマ別に集約されて紹介されるケースが多い。そのため、場所という切り口では情報が分散していて探し難い。情報のファインダビリティ(見つけやすさ)が低い状態となっている。

オープンデータによるアプローチ

 ファインダビリティの向上には、場所や目的など観光客の置かれた状況に応じた切り口で観光情報を再構成して提供することが効果的である。それを低コストで実現する鍵となるのが観光情報のオープンデータ化である。

 オープンデータとは「再利用が容易な形式」で「オープンなライセンス」により公開されたデータである。再利用が容易な形式とは、他のアプリなどによる利用が容易なデータ形式のことである。

 CMS(コンテンツマネジメントシステム)を用いたウェブサイトであれば、少々のシステム改修で自動的に提供することも可能である。オープンなライセンスとは、指定された条件を守れば個別の許可なしにデータを二次利用できるようなライセンスである。著作者名などのクレジットを表示すれば営利目的にも利用可能なCC BY(クリエイティブ・コモンズ・表示)(注1)が広く用いられている。

 観光に関連するさまざまな情報がオープンデータとして公開されることにより、利用のハードルが格段に低くなる。地元の観光事業者やIT事業者が、オープンデータを組み合わせて新しい形の観光情報サービスや観光アプリを提供するビジネスを立ち上げることも容易になる。

 その結果、観光客は必要な情報を容易に入手できるようになり、データ提供者は観光客への有用な情報提供という本来の目的を達成することができる。すなわち、データ提供者、サービス提供者、観光客の間にWin-Win-Winの関係が成り立つのである。

注1 Creative Commons – 表示 2.1 日本 – CC BY 2.1 JP http://creativecommons.org/licenses/by/2.1/jp/

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