着地型観光情報のオープンデータ化による活用

奥野拓公立はこだて未来大学システム情報科学部准教授

観光情報のオープンデータ化と活用の事例

  オープンデータ活用の先駆的な取り組みを行っているのが鯖江市である。これまでに、公共施設、景観、トイレ情報、避難施設など多くのオープンデータが公開されている。それらをイラストマップ上に表示して街歩きを支援するスマートフォンアプリ「さばえぶらり」の他、多数のアプリが公開されている(注2)。

 京都では、おすすめ情報、花の見頃情報、歩行者バリアー情報、トイレ情報などがオープンデータとして公開されている。それらをマップ上に表示して観光を支援するスマートフォンアプリ「ご当地なび」や個別の情報をマップに表示するアプリが公開されている(注3)。

 函館市では、公立はこだて未来大学のICT教育の一環として、観光情報のオープンデータ化と観光アプリ開発をテーマとしたプロジェクト型学習に取り組んでいる。これまでに、まちあるきマップ、映画ロケ地、土木遺産をそれぞれオープンデータ化している。それらを函館市公式観光情報サイトの観光スポットと関連付けて提供するスマートフォンアプリ「はこだてMap+」を公開している(注4)。

スマートフォンアプリ「はこだてMap+」の主要な画面
スマートフォンアプリ「はこだてMap+」の主要な画面

オープンデータ戦略と観光情報

 2012年6月に政府のIT戦略本部が「電子行政オープンデータ戦略に関する提言」(注5)を発表した。

 この提言では、行政の保有するさまざまな分野のデータを二次利用可能な形式により公開し、民間のサービスなどで活用可能とすることを求めている。

 また、地域に根ざした草の根的なオープンデータの普及と活用が期待されており、その要となるのが地方自治体の保有するデータの積極的な公開である。観光情報もその例外ではない。たとえ営利目的であっても、情報が活用され、結果として経済が活性化し、最終的に市民に利益が還元されるのであれば、積極的に公開を推進すべきであるという考え方である。

 観光情報は、それが活用されることが直接観光客の満足度の向上、そしてリピーターの増加につながると同時に、観光事業者の収益増に直接つながる。つまり、着地型観光情報のオープンデータ化は、そのメリットが明確な取り組みであると言える。

注2 データシティ鯖江ポータルサイト http://data.city.sabae.lg.jp/
注3 京都フラワーツーリズム推進協議会:ご当地なび(みささぎナビ、宇多津劇場、宇治なび、嵐山なび)     
   https://itunes.apple.com/jp/app/id398326620
注4 FUTURE UNIVERSITY HAKODATE: はこだてMap+ ~まちあるきで発見!おすすめ観光コース~”
   https://itunes.apple.com/jp/app/id744881889
注5 高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部: 電子行政オープンデータ戦略に関する提言 
   http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/denshigyousei/honbun.pdf

著者プロフィール

奥野拓

奥野拓公立はこだて未来大学システム情報科学部准教授

北海道大学大学院工学研究科博士課程精密工学専攻修了後、(株)ジャパンテクニカルソフトウェア、(株)情報科学センター、北海道大学大学院情報科学研究科特任助教授を経て、2005年4月より現職。主な研究テーマは、着地型観光コンテンツのLOD化と活用、地域史資料のLOD化と活用、地域デジタルアーカイブシステム、Webサービス、ソフトウェアドキュメンテーション、eポートフォリオシステムなど。

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