「モノの価値をお客さまに伝えるにはどうするか」燕三条 工場の祭典が生まれた背景  メソッド・山田遊さんインタビュー(後編)

山田遊株式会社メソッド 代表取締役

2017.12.12新潟県東京都

DM、ウェブサイト、Tシャツ、会場構成などあらゆるところで使われているピンクのストライプ Photos:Ooki Jingu
Photo:Ooki Jingu

*前編はこちらから

文字から写真、動画、そして現場へ

――商品の良さを伝えるのに、POP以外で有効な手段はありますか。

山田:これまで文字以外に写真や動画も使ってきて、実は「燕三条 工場の祭典」もその延長線上で生まれたと言えます。

 2011年に東京駅構内商業施設のエキュートで岩手県の販売イベント「漆の国 いわての伝統工芸」のディレクションを担当しました。岩手県は国内最大の漆の産地で、漆器も県を代表する伝統工芸品です。

 エキュートは内観が全体で統一されている分、各テナントで個性が出すのが難しく、何を置いても目立たなくなってしまう傾向がありました。そのため、正月の時期と漆の朱色に合わせ、赤い布を引いて目立たせたのですが、このディスプレイでは、商品が現地でどのように作られているかはあまり伝えられませんでした。

エキュート東京のイベントスペースで行った2011年「漆の国 いわて伝統工芸」。メソッドでディレクションを担当。国内最大の漆産地である岩手県の漆器などを販売
エキュート東京のイベントスペースで行った2011年「漆の国 いわて伝統工芸」。メソッドでディレクションを担当。国内最大の漆産地である岩手県の漆器などを販売

 そこで2回目となる翌年は、ツールとして写真を使いました。カメラマンを雇う余裕がなかったので、チェキを現場に持ち込んで、風景や工場、職人さんが作っている様子、漆器が使われている様子を1,000枚くらい撮影しました。自分たちが岩手県に行って感じたことをお客さんに何とか伝えたいと思い、その写真をディスプレイに使いました。

2012年の「漆の国 いわて伝統工芸」。産地の風景や漆器の制作過程をポラロイドで撮影し、展示スペースにディスプレイした
2012年の「漆の国 いわて伝統工芸」。産地の風景や漆器の制作過程をポラロイドで撮影し、展示スペースにディスプレイした

 その後、中川政七商店さんが伊勢丹 新宿店に売り場をつくることになり、さまざまな産地でモノが作られている過程を記録した動画を制作しました。周りの映像のチームに声をかけ、10カ所程の産地を回りました。

――動画を制作するときに、モノづくりのどこに焦点をあてるかなどを考えましたか。

山田:まず考えたのは動画の尺です。展示会などでもよく動画が流れていますが、5分以上もあると、どんなに興味があっても見ていて長いと感じます。なので長さは3分ほどとし、それぞれの産地でモノができあがるまでのプロセスがゼロから分かるようまとめました。

 普段、お客さまは商品という完成品しか目にしていないため、そのモノがどんな風に作られているかは何となくでしか分かりません。モノづくりの面白さは、ゼロから形あるモノに変わっていくことにあるので、そのプロセスを忠実に映像化していけば、モノづくりの価値が伝わるのではないかと思いました。

 そんな工夫をあれこれしていた頃に、燕三条で中川政七商店の中川政七さんと対談する機会があって、その懇親会の場で、次年度予定されていた事業に自分が関わることになってしまって。酒の勢いで言い出してしまった部分も大いにあったのですが、今まで東京で色々なイベントをやってきて、その経験を活かせば面白くなるかなと。

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