小さなまちのどこにでもある資源を魅力あるストーリーに変え、伝えるための12のコツ ステップ11.やりっぱなしにしない! ~成長のためのふりかえりとフィードバック~

菊間彰一般社団法人をかしや代表理事

2019.05.07愛媛県

ふりかえりシートの活用

 ふりかえりの際ありがちなことですが、多くの日本人にとって自分や仲間の「良いところを探す」というのは慣れていない場合が多く、ついついダメ出し、悪いところ探しになってしまうことがあります。

 また、自分自身をふりかえる時も「私に良いところなんてなにもない」と思ってしまう人も少なからずいます。自分のことを考えるのは案外難しいものです。

 そこで活用したいのが「ふりかえりシート」。あらかじめ考えるべき項目を設定し、記述式のシートにしたものです。これを作っておけば、あとはシートに書き込み、それを読み合わせ、意見交換をするだけでスムーズにふりかえりをすることができます。

 私がいつも使っているふりかえりシートを、ぜひ参考にしてみてください。

ふりかえりシート

フィードバックの重要性

 みなさんは、ガイドがうまくいったか、いかなかったかを、どのように判断していますか? もちろん自分自身でふりかえりをすることも大切です。しかし、自己判断には限界があります。

 ガイド技術を向上させ、より良いガイドを目指すのなら、良いガイドができたかどうか、客観的な指標をもつことが重要です。

小さなまちのどこにでもある資源を魅力あるストーリーに変え、伝えるための12のコツ ステップ11.やりっぱなしにしない! ~成長のためのふりかえりとフィードバック~
フィードバックの様子。ダメ出しではなくお互いが楽しめる雰囲気で実施しましょう

 指標としてよく使われるのはアンケートです。参加したお客さんに意見をもらうアンケートは、多くの場所で実施されているのではないでしょうか。しかし、アンケートを上手に活用するのは意外と難しいものです。

 まず、設問内容によって結果が全く変わってきます。そして、多くのお客さんは、ツアーが終わった後に時間を取ってまでアンケートなど書きたくないものです。

 それを無理にお願いしても「楽しかったです」「良い経験ができました」など、無難な言葉を書くことが多いと思います。日本人は謙虚なので、改善点はまず書いてくれないと思った方が良いでしょう。

 逆に、とにかく文句を言いたいという方もいます。こういう人に当たってしまうと、とても良いガイドができたとしても悪く書かれてしまうこともあります。

 例えばデビューした新人さんが一生懸命ガイドをして、とても良い内容だったとしても、アンケートでとことんけなされてしまい落ち込むことにもなりかねません。

 このように、客観的な指標としてアンケートを活用するのは、なかなか難しいものです。

 それでは客観的な意見をもらうにはどうしたら良いのでしょうか? それが「フィードバック」です。フィードバックとは、ガイド仲間やスタッフに同行してもらい、実施後その人に意見をもらうことです。

 これにより、自分では気づくことのできないクセや、お客さんとのやりとり、距離や立ち位置、アクティビティ進行のスムーズさ、ツアー全体のテンポやリズムなどを確認できるようになります。必要であれば写真や動画をとってもらうのも自分を客観視するためにとても有効です。

 しかしながら、フィードバックを実施するためには、1回のツアーに2人以上のスタッフ配置が必要となります。これは小さな組織ではなかなか難しいかもしれませんが、成長のために極めて有効なので、なんとか2人体制を組んでツアーを実施することをおすすめします。

 ガイド2人が難しければ事務局スタッフが同行するでもかまいません。これにより、事務局としてもツアー内容が把握できるので、ツアーの質を担保することにもつながります。

 そしてもう一つ重要な点があります。私は今までさまざまな団体でフィードバックの仕組みを取り入れてきましたが、単純にふりかえりで意見を言うだけだと、まず確実に失敗します。

 なぜかというと、無意識のうちに「ダメ出し」になってしまうからです。これは下手をすると、ガイド同士の信頼関係やチームワークを壊すことにもなりかねません。

 多くの日本人は、相手の「良いところを探す」「褒める」ということに慣れていないのです。したがって、フィードバックをうまく機能させるための「しくみ」が必要です。

 次のページに「フィードバック五箇条」としてポイントをあげます。経験上、この5つのポイントを守り、先のふりかえりシートを活用することでだいたいうまくいくのではないかと思います。

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