連載 「地域ブランドのつくりかた」成功のための12のハードル ~その6.地域ブランドづくりにとって役に立つ「マーケティング」という大きなハードル
買ってもらう、来てもらうにはどうすればよいか
現代は、モノがあふれ欲しいものがない時代だと言われています。また、かつてのように憧れから「一度は行ってみたい」と思う場所も少なくなり、「一度行ったからもういいや」となっているようです。
‟欲しいモノがない”、‶行きたいところがない”人たちに、どうすればわが町の商品が売れるのか、そして訪れてもらえるのか、特にA級の観光地ではない地域では悩みが深いでしょう。どうすれば買っていただけるのか、来ていただけるのか、そして地域ブランドとして信頼をいただけるようになるのか、ここがマーケティングの胆になります。
第3回でご紹介した、玉造温泉の取り組みに大きなヒントが隠れています。玉造温泉は、「美肌・姫神の湯®」として、温泉水や温泉街を捉えなおし、大きな成果を上げました。この成果を上げたマーケティング上のポイントは、「美肌の湯」という使い古されたフレーズを新たな商品として、加えて販売促進ツールとして再創造したことです。
玉造温泉は、出雲風土記に「肌に良い」と謳われているように、美肌の湯として古代より出雲地方では知られていました。しかし、美肌になることは一般的な評判として広がっていたにすぎません。玉造温泉の観光地域づくりに取り組む(株)玉造温泉まちデコは、このことの裏付けを取り、実際の商品として美肌になることを実感できる商品開発を行いました。
具体的には、玉造温泉のお湯の成分を分析し実際に肌にとって保水効果が高まることを突き止め、その成分を活かした化粧品をつくりプロモーションを行いました。水分率が165パーセントにアップするという優れた結果を活かし、化粧品をつくり「こんなモノが欲しかった」を生み出したのです。
同時に、この化粧品を買わずとも、玉造温泉のお湯につかるだけで高級化粧品並みの効果が得られることを訴求し、「美肌の湯」として温泉に来ていただくことを仕掛け成果を上げてきました。化粧品の売り上げは、3億円をはるかに超え、従業員も40名を超えています。そして玉造温泉も、一時の危機的な状況を脱し多くの若い女性観光客で賑わうようになりました。玉造温泉でつくられた化粧品は天然の美肌化粧品、そしてお湯も美肌効果の湯として、地域ブランド商品となっているのです。
出雲風土記にも「肌に良い」と謳われている玉造温泉。美肌の湯として地域ブランド商品となっている
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