連載 「地域ブランドのつくりかた」成功のための12のハードル ~その5.先進事例に倣うなら、「モノマネ」より「コトマネ」で、というハードル

福井隆東京農工大学大学院客員教授・地域生存支援有限責任事業組合代表・NPO法人エコツーリズムセンター理事

島の人と島の知恵を活かし、丁寧に作られた「石垣島ラー油」

 最後に、石垣島の地域ブランドとして人気になっている「石垣島ラー油」について触れたいと思います。この商品の最大のこだわりは「石垣島の素材を使って、石垣島で作る」ことだと聞きました。地域にあるものにこだわって、何かをつくる「コト」が地域らしさを形にする近道でもあります。

 島で手に入らない素材(山椒・胡麻・油)は別にして、「石垣の塩」や「島唐辛子」、「ピパーチ」(島コショー)「春・秋うこん」、「黒糖」などを原料として、この「石垣島ラー油」は作られています。原料は、島の生産者に直接委託し作ってもらっているそうです。石垣島の風土特性に基づいた優位性のある素材、島コショーや島唐辛子、石垣の塩、地元産のサトウキビでつくる黒糖などを主原料にしていることが重要なのです。その中でも島コショーは、島のおばあさんが丁寧に手づくりし、強い刺激で目を腫らしながらも作ってくれているそうです。島唐辛子も、ほとんど台湾からの輸入であったのを、なんとか島で手づくりの農家を探し手に入れたそうです。

 このように、このラー油には島人の汗水が詰まっていて他の地域ではできない「丁寧な、島の知恵を活かしたものづくり」になっているのです。加えて、石垣島のファンを増やすため、ラー油をつくり販売を行っているのだと事業責任者から聞きました。「その土地のものを食べたら、その土地の一部になる」という考え方を信じているそうです。

 すなわち、石垣島の遺伝子を身体の中に取り込んでもらうことによって、石垣島のファンを増やしたいとの考えで事業を行っているということです。

 「島の人と島の知恵が織りなすものづくり」を地域らしさの核として、ファンを増やしたいとラー油を作り販売した結果、それが地域ブランドとして人気になっているわけなのです。

福井隆 地域ブランド
石垣島の素材を使って、石垣島で作る、石垣島ラー油

 

<連載第1~4回はこちら>
その1.「市場競争」の中でブランディング事業を行うということ
その2.ブランディング、なぜ必要?「目的の共有とブランド定義づくり」のハードル
その3.あいまいな「ブランディング成果」というハードル
その4.「地域らしさ」の共有ハードル、地域ブランドづくりで大切なのは魅力ある地域らしさ

著者プロフィール

福井隆

福井隆東京農工大学大学院客員教授・地域生存支援有限責任事業組合代表・NPO法人エコツーリズムセンター理事

「地域で生きる希望をつくる」―地域の文化風土を活かした、持続可能な経営支援―

地域支援・事業化支援アドバイザー・地域ブランドファシリテーター
・地域ブランディング戦略作成支援
・観光地域づくり支援
・ステークスホルダーの合意形成支援

「地域で生きる希望をつくる」をモットーに、持続可能な地域をつくるための支援活動を行っている。地域の内発的な計画づくりの支援、地域資源を活かした魅力的な事業計画づくり、観光地域づくり支援、地域の人材育成支援など。
E-MAIL:kinari104@gmail.com

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