連載 「地域ブランドのつくりかた」成功のための12のハードル ~その5.先進事例に倣うなら、「モノマネ」より「コトマネ」で、というハードル
里山の暮らし体験に価値を見出し、他にはない「サイクリング」を生み出した(株)美ら地球
里山サイクリングでは、日本のありのままの暮らしやライフスタイルを体験
店先にも自転車が置かれている
地域らしさをどこに置くか、前回お話をしたようになかなか地域でまとめることは難しいものです。しかし、それこそが「モノが売れる、人が来てくれる」近道となるのです。安易にモノマネするより、地域の魅力ある本質を探し、風土に基づく優位性を活かし、「地域らしさ」として商品化の背景とするほうが伝わるし、何より長続きさせることができます。
従来型のエージェント頼りの観光地が苦戦する中、岐阜県の飛騨古川という山間地域の町で「里山サイクリング」という着地型プログラムツアーの造成・販売で成果を上げている事業者がいます。株式会社美ら地球(ちゅらぼし)です。ここでは、インバウンドの欧米系旅行者にターゲットを絞り、「里山の暮らしをガイドする」という誘客コンセプトで商品を造成し、「里山のありのままの暮らし」を分かりやすく表現・体現するため「サイクリング」という手段を選択、実際にサイクリングツアーで成果を上げています。
(株)美ら地球が考えたのは、日本のありのままの暮らしやライフスタイルを体験すること、特に水田や豆の乾燥風景などの農村景観と里山の暮らしを体験することが、欧米系の外国人にとっては旅のキラーコンテンツになるのではと考えたようです。
実際に、取締役の山田慈芳氏に聞いたところ、外国人に人気のコンテンツは水田(ライスフィールド)を自転車で走り、米について学ぶこと。里山の水田周辺を走り、休息時に米についてのガイドが人気になっているそうです。例えば、「日本の米には、食用米、もち米、酒米の三種類がある」ことを伝えるだけでも喜んでもらえるのだと聞きました(サイクリングガイドが、事前に用意したパネルなどを利用して説明する)。すなわち、里山のありのままの暮らしの学び体験が人気なのです。このことを地域らしさの核として観光商品を造成し、商品化しているのです。
ここで注意していただきたいのは、「サイクリング」が商品として上手くいきそうだから事業化したのではない点です。この地域では、里山の暮らし体験(飛騨古川らしさ)が価値を生むだろうと考えた点に注目していただきたい。
しまなみ海道や、この古川で「サイクリング」が人気になっているからと、サイクリングロードやマウンテンバイクなどを整備することが流行っています。ここでも「モノマネ」すれば上手くいくだろうという安易な考え(罠)が拡がっているようです。
(株)美ら地球のように、地域らしさこそが価値を生み出すのだと足下をあらためて見直し、里山の暮らしのような魅力あるコンテンツとなる「コト」を探してほしいものです。
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