連載 小さなまちのどこにでもある資源を魅力あるストーリーに変え、伝えるための12のコツ ~ステップ2 まち独自の魅力の見つけ方~

菊間彰一般社団法人をかしや代表理事

2018.07.26愛媛県

小さなまちのどこにでもある資源を魅力あるストーリーに変え、伝えるための12のコツ ~ステップ2 まち独自の魅力の見つけ方~
新鮮な太刀魚を3枚におろし、竹に巻いて秘伝のタレをつけて焼いた宇和島名物「太刀魚の巻き焼き」。甘辛い香りが食欲をそそる 写真提供:宇和島市

五感を使って感じよう

 そのまち「ならでは」の特徴は、景観だけに限りません。音を聞いたり、においを嗅いだり、あるいは名物料理を味わってみたり。「五感」をつかってまちをまるごと感じてみましょう。せせらぎや風鈴の音を聞けば、それだけで「涼」を感じるものです。五感の中でも特に、においや味覚は記憶に鮮明に残るので、うまくガイドに生かすことができればまちの良き思い出として残すことができます。

小さなまちのどこにでもある資源を魅力あるストーリーに変え、伝えるための12のコツ ~ステップ2 まち独自の魅力の見つけ方~
四季折々の良さを探そう

その場所、その時「ならでは」を探そう

 また、その場所ならではの特徴を探すのと同時に「その時」ならではを探すのも重要です。日本には美しい四季があります。その土地の自然とまちなみは、四季折々の姿で訪れる人を楽しませてくれます。

 ガイドをする季節はいつでしょうか? 花の咲き誇る春? 日差しが眩しい夏? あるいは紅葉の美しい秋? それとも雪景色の冬でしょうか? 季節に応じて、その場所「ならでは」の良さがあるはずです。その季節を映し出す、そのまちの一番良いところを探してみましょう。他の場所とは違った良さを発見できることでしょう。

小さなまちのどこにでもある資源を魅力あるストーリーに変え、伝えるための12のコツ工夫と配慮で、雨の日も楽しく

 そして、こうした大きな季節変化とは別に、日々の小さな変化や移ろいも気にしてみましょう。たとえば、雨の日なのか晴れの日なのか、風があるのかないのかによってもそのまちの魅力やその伝え方は変わってきます。多くの場合、雨のガイドツアーはガイドもお客さんもテンションが下がりがちですが、雨にふさわしいルートを選び、雨を生かしたツアー内容にすることで、晴れの日以上に楽しいツアーにすることも可能です。

 日差しの向きや影も重要です。これはまた改めて詳しく伝えますが、優秀なガイドは日差しや影を常に意識しています。基本的な考え方としては、夏や暖かい季節はお客さんに影に入ってもらい、冬の寒い季節はお客さんが日向にいられるような気遣いをします。そしてお客さんが眩しくないように、自分が太陽に向かって、あるいは日差しを横から受ける向きに立ち位置をとります。太陽を背にするのは厳禁です、お客さんが眩しくなってしまいますから。ということは、午前のツアーと午後のツアーではガイドの立ち位置は違うことになります。

 このように、優秀なガイドは常に「その場所」「その時」ならではの魅力が伝わる場所やルートや向きをえらび、お客さんに配慮してガイドをしているのです。

それでもそのまちの魅力が見つからない時は……

 このように具体的なポイントをあげても、どうしてもそのまち「ならでは」の魅力が見つからない、という場合もあるかもしれません。特に生まれ育ったり、自分の住んでいるまちの魅力は見つけられないかもしれません。これは意外とよくあることです。なぜならば、自分の身近な場所の魅力には、人はなかなか気づきにくいものだから。

 私はいろんな場所に行ってガイドや研修をしています。すると、すぐにそのまち「ならでは」の魅力に気づくことができます。それは私が「よそ者」だからです。フレッシュな気持ちと視点を持ってまちを眺めるので、すぐにそのまち「ならでは」の魅力に気づくことができます。

 しかし、地元の人に話を聞くとそのまちの良さが全然出てこないことがあります。それどころか「こんなまちのどこが良いのか?」と聞かれることすらあります。しかしこれは、そのまちに魅力がないのではなく、全てが「当たり前」になってしまっているだけです。そうでない人に意見を聞けば、きっとそのまちの魅力が見えてきます。

 町おこしで必要な存在として「若者、ばか者、よそ者」が大事であるとよく言われます。フレッシュな視点を持ち、既成概念にとらわれない大胆な発想ができ、客観的に物事を見ることができる存在が必要、という意味です。もし自分のまちの魅力がわからなくなったら、そんな人たちに聞いてみると良いでしょう。外から来た観光客や移住者、若者、子どもなどに意見を聞いてみるのです。きっと自分たちが「当たり前」と思っていたモノ、コトの中にこそ、その場所ならではの宝が潜んでいることに気づくはずです。

 また、いくつかの他のまちを見て、自分のまちと比べてみるのもよいかもしれません。外国に行ったり外国人と交流することでかえって日本のことが見えてくるように、よそのまちを見ることで自分のまちの魅力が見えてくることでしょう。

著者プロフィール

菊間彰

菊間彰一般社団法人をかしや代表理事

1974年生まれ。「一般社団法人をかしや」代表理事。環境教育と自然ガイド(インタープリテーション)が専門。ロープワークやナイフワーク、火起こしなどアウトドアスキル全般も得意。20代はじめに猿岩石に影響されバックパッカーとして東南アジアを巡る。その後、富士山麓、沖繩、名古屋、新潟など全国で自然に関わる仕事をしたのち2008年より愛媛県今治市に移住「をかしや」を起業。自然体験のノウハウをベースとした、行政向け、企業向け、一般向け研修を多数実施。「まごころこめて、ほんものを提供する」がモットー。

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