ようこそ、柑橘の世界へ

広井亜香里NPO 法人柑橘ソムリエ愛媛

2018.01.30愛媛県

柑橘ソムリエ愛媛との出会い

「愛媛県宇和島市、特産のブラッドオレンジなどをつくっています」

 とにかく柑橘産地との関わりを求めていた私は、学生を地方に派遣し地元の方々と交流しながら地域活性を考える「地域づくりインターンの会」に参加し、冊子の中の、愛媛県宇和島市の紹介文にビビっときた。そこでインターンの受け入れをしてくださったのは、土に触れ農作物を育てているようにはとても見えない、お洒落な30代のみかん農家、Nさん。

 聞けば自分の家の柑橘農業経営の傍ら、「柑橘ソムリエ」なる組織で理事長を務めているという。

 世の中には多種多様な柑橘があるにもかかわらず、その種類の豊富さや味わい方、楽しみ方を知る人はめったにいない。柑橘生産量が日本一である愛媛県もご多分に漏れず。

「柑橘の魅力や楽しみ方を発信し、“柑橘文化”をつくりたい。それも、とびきり楽しく!」

 そんな思いを共有した宇和島市の柑橘農家さん方が松山市の飲食に携わる人たちとタッグを組み、発足したのがNPO法人柑橘ソムリエ愛媛。柑橘を楽しく、そして専門的に語れる「柑橘ソムリエ」育成のライセンス制度を整えることを目標に、活動を始めたところなんだとか。

4
「柑橘文化をつくりたい!」そんな思いを持った農家さんが松山市の飲食に携わる人たちとタッグを組んだ「NPO法人柑橘ソムリエ愛媛」

 当時「柑橘を剥く音」にハマっていた私はNさんのお話を喜々として伺い、すぐに他のメンバーとご対面。「農業者」の固定観念を覆すような、かっこよくて個性豊かなメンバーたちは、お酒片手に柑橘を「面白く」語る。

 例えば、柑橘の品種「せとか」には色気がある、とか、みかんは土の中の微生物の味がする、といったような議論。マニアックで面白くて、それでいて柑橘の神髄を捉えているような話が、メンバー同士で普通に受け入れられていた。それまで、他所ではただちょっと変わった嗜好くらいにしか思われていなかった柑橘を剥く音の話も、真剣に面白がってくれた。

 「柑橘文化」ってこういうことなんだ、と感銘を受けた私は、自らも柑橘ソムリエを目指すべく、また、柑橘を楽しくマニアックに語る柑橘ソムリエを全国に誕生させることを夢見て、翌年からNPOのメンバーに仲間入りさせてもらった。

柑橘文化を広める柑橘ソムリエ

 柑橘ソムリエのメンバーはさまざまだ。愛媛県宇和島市の若手柑橘生産者を中心に、飲食店関係者、柑橘の皮を加工する「ピールアート」のアーティストや学生など。

 実際のところ、発足3年目でまだソムリエのライセンス制度は未完成。現在は、ライセンス制度確立に向けて柑橘の魅力発信活動やイベントを行っている。

5
柑橘ソムリエの活動を代表するイベント「柑橘の世界」

 現在の柑橘ソムリエの活動を代表する「柑橘の世界」というイベントは、メンバーがつくる柑橘と、その柑橘を搾ったストレートジュースの食べ飲みくらべを中心に、柑橘料理研究家の先生による「みかん料理」の振る舞いや、柑橘の皮をつかったピールアート教室、農家メンバーによるバンドライブや柑橘BARなど、まさに柑橘をとりまくあれこれをすべて楽しむもの。これまでに3回開催した。

6
柑橘の皮を使った「ピールアート教室」

 果実やジュースの食べ飲みくらべでは、メンバーがつくる多種多様な柑橘やジュースをずらっと並べ、一般の参加者もメンバーも入り交じって「柑橘ソムリエ的視点」で品評。それまで柑橘に触れる機会の少なかった一般の参加者から、メンバーも驚くような面白いコメントが出るなど、「楽しみながら柑橘への造詣を深める」このイベントからは、柑橘ソムリエライセンス制度構築にむけての手ごたえを感じている。

 イベントの一企画「柑橘BAR」は、柑橘生果やストレートジュースをつかったカクテルを、お客様の好みに合わせてその場で提案するもの。この企画は評判となり、現在は愛媛県内の飲食店とタイアップして、県産の生果やジュースをつかった「本物の柑橘カクテル」を楽しめる店を「柑橘BAR」認定店とする取り組みも始まっている。

7
柑橘生果やストレートジュースを使った柑橘カクテルが楽しめる「柑橘BAR」

8
柑橘ソムリエジュース。その柑橘が持つ味の特徴をチャートで表現

 昨年からは、「本物の味」と「表現」にこだわった柑橘ソムリエオリジナルジュースの販売も行う。
 生産者メンバーがつくった35種類以上の100%ストレート柑橘ジュースを揃え、ただ販売するだけでなく、柑橘ソムリエらしく、メンバー内でテイスティングした結果を詳細な味のチャートにして表現。ジュースは食感がない分、その原料となった柑橘が本来持つ味をダイレクトに感じられることから、品種ごとの味わいの違いを感じやすい。

 味わいを分解した「甘味」「旨味」「酸味」「苦味」の項目に加えてその柑橘品種独自の項目を設けて評価を付けたポップを作成し、それぞれの柑橘が持つ個性や特徴をPRしている。最近では愛媛県に留まらず、首都圏でのイベントにも出させてもらえるようになった。

 今年は、これらのイベントや販売を足掛かりに、いよいよライセンス制度の発表に向けて始動する予定だ。

1 2 3

スポンサードリンク