「着地型観光」「着地型旅行商品」という用語の本質的な問題

羽田耕治横浜商科大学教授

2011.10.16

 「着地型観光」、あるいは略して「着型観光」という用語は、業界関係者はもちろん、今では地域振興に携わる人々の間ではかなり浸透してきた言葉のように思われる。業界専門誌や業界紙では普通に使われており、各地域の観光関係セミナーの案内にも当然のように使われている。遺憾ながら観光分野の「学会」の場でさえもそうである。

 しかし言葉の使い方、用語の適切さを考えれば、きわめて不可解な言葉である。観光という現象を人の行動から捉えれば、発地と着地が同時にあることから、どちらか一方だけを取り上げた「発地型観光」あるいは「着地型観光」なんてものはありえない。「関係者」以外の人間からすれば、まったく意味不明な言葉である。

 こういう言葉は使うべきでない。まして、「発地型観光=マスツーリズムの弊害を体現した、好ましくない観光」、対して「着地型観光=地域社会と共生する、持続的な観光」といったように、価値指向的な捉え方で使用する向きがある。とんでもない話である。

 そもそも、「着地型云々」という表現は、旅行業界関係者から、発地側で造成する旅行商品の限界として、今後の旅行商品のあり方として「着地」である「地域」の側で造成する必要があるという問題意識から提起された言葉である。したがって「着地型旅行商品」という言葉であれば、従来の「発地型旅行商品」(旅行商品のほとんどが「発地型旅行商品」であったので、わざわざ「発地型旅行商品」とは言わなかっただけである)に対置する言葉としては妥当であろう。

 しかし、この言葉もわかりにくい。筆者は「着地型旅行商品とは?」という講演をするときは、「地域の側が作る地域主導型旅行商品と考えてください」と言うことにしている。地域の多様な主体を巻き込みながら作り上げていく「旅行商品」を目指すなら、旅行業界関係者ならいざ知らず、一般の人にわかりやすい言葉を使うべきである。

 そもそも「旅行商品」は旅行業法が関係し、宿泊あるいは運輸サービス(またはその双方)の提供が基本的にセットになった商品である。だから「着地型旅行商品の造成・販売」を行うには旅行業法に則り、旅行会社登録が必要となる。

 しかし、現地集合・現地解散型の「観光商品・観光メニュー」の企画・販売・実施などは旅行業法の対象外である。この点、「着地型旅行商品」ばかり目を奪われていると、地域資源を活かした「観光商品・観光メニュー」づくりの可能性が狭まりかねない。

 着実に理解を深め、多様な主体の参画を仰ぐためには言葉の問題は重要である。観光庁が提唱する「地域観光プラットフォーム」も、「(旅行業機能を持った)地域観光振興推進組織」と言う方がよほどわかりやすいのではないだろうか。

著者プロフィール

羽田耕治

羽田耕治横浜商科大学教授

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