おとな旅・神戸の魅力 DMOが取り組むべき着地型観光の要点を探る

高橋一夫近畿大学経営学部教授

2016.11.10兵庫県

おとな旅・神戸の魅力 DMOが取り組むべき着地型観光の要点を探る
国内有数の夜景スポットとして知られている神戸。人気の観光スポット「ポートタワー」とショッピングやグルメなどの施設が揃う「ハーバーランド」の光の競演 Ⓒ 一般財団法人神戸国際観光コンベンション協会

着地型観光とはなにか

 着地型観光という言葉が2008年頃からからよく聞かれるようになった。日本の観光旅行は従来「発地型」で、団体として動くものが主流であった。すなわち、観光客が出発する地点で、旅行会社により開発・商品化されたパッケージツアーを申し込み、参加するというものである。こうした商品は、誰もが知っている神社・仏閣や観光スポット等の「名所めぐり」が中心にならざるを得ないため、長い間、観光客はご当地の「知る人ぞ知る」と言われるような隠れた魅力に触れる機会が少ない状況であった。

 観光旅行の経験が少ない人にとっては、パッケージツアーで効率よく名所をめぐるという形態は好都合な場合も多いが、日本の観光客も旅行の経験を重ね成熟する中で、パッケージツアーでは味わうことができない旅の楽しみを求めるようになってきている。

 こうした観光客のニーズの変化を捉え、観光客を迎える側である「着地」で旅の楽しみを創出し、観光客に提供するようになったことが「着地型観光」の始まりである。当初は「パッケージツアーの地域版」のように、受け入れ地で名所と言われる場所を、まとまってガイド付きで歩いて回る「まち歩き」が多くを占めていた。じっくりと腰を据えてご当地の食や体験メニューを楽しむ、地域の歴史や文化を学ぶといった体験型は手間がかかり調整も大変なため、数が少ない状況であった。また、「まち歩き型」商品は行政が行うため、補助金投入を前提とした価格になっており、「市民が参加しやすい価格」を参考に、せいぜい1,500円が上限に設定されていた。

 本稿では、従来からの着地型商品のあり方を見直し、「徹底した顧客価値の追求」と「持続可能な事業展開」を基本方針に掲げて神戸市が取り組みを進めた「おとな旅・神戸」を取り上げ、DMOが取り組むべき着地型観光の要点とは何かを考察する。

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