ようこそ、柑橘の世界へ

広井亜香里NPO 法人柑橘ソムリエ愛媛

2018.01.30愛媛県

色々なみかん
たくさんの種類がある柑橘

 冬の食卓を彩る果物の定番と言えばそう、みかんだ。
 お手頃でいつでも気軽に食べられる、あのプリっとした食感と口の中を占める甘酸っぱい幸せは、老若男女誰しもが馴染み深いものだろう。

 かく云う私も幼い頃からみかん大好き。小中学校の頃から、給食で出たみかんを友達や先生の分まで貰ってはカバンに入れて持ち帰り、下校中に食べていたほど。
 しかしながら東京に生まれ育った私は、みかんが育つ産地や背景を知る機会もなく、ただ美味しそうなみかんを探しては買い集めることしかできなかった。

 そんな私の「かんきつ転機」は2015年。初めて訪れた晩夏の香川県で、瀬戸内海に浮かぶ小さな離島の柑橘畑に偶然足を踏み入れたことだ。

 きらきら光る瀬戸内海の水面と共鳴するような、鮮烈な美しさで佇むみかん畑。まだ青々とした小さな実がなる木々が立ち並び、地面いっぱいに未成熟みかんらしき実がごろごろ落ちている。

  (この青い実が、せいぜいあと2~3カ月であの、まぶしいみかん色になるの?)

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私の「かんきつ転機」の地、香川県女木島のみかん畑

 この景色が忘れられず同年の冬、再びその場所に赴いたところ、幸運にもそこのみかんを食べることができた。初めて産地で食べる獲れたてのみかん。あまりのおいしさに衝撃を受けた。驚きは間髪入れずにやってくる。

 「これらのみかんは市場に出すと赤字になる、だから半分ほどは放って(=廃棄して)いる。」
 「どこの産地でも似たり寄ったりだが、作る人がどんどんいなくなり、このあたりももう産地とは言えなくなっている。」

 そう言ってみかん農家さんは、初めて会った私に沢山のみかんをくださった。

 私はずっと、東京で美味しいみかんを探すのに苦労していたのに、いっぽう産地ではこんなに美味しいみかんを捨てている、という不平等。みかんを作る人が減っている、という現実。みかん好きを自覚しながらそれらを知らなかったことも恥ずかしかったが、考えてみれば、そもそも、あまりにも身近な「みかん」という果物を、深く知ろうとしている人は一般的にいるのだろうか。みかんの世界は、もしかすると知れば知るほど面白いのではないか。自分も知りたいし、世の中の人にも知ってもらいたい。

 そう考えた私は、まだ発足して間もない学生団体「東大みかん愛好会※」に入会し、全国津々浦々のみかん、ひいては柑橘のことを学びながら、産地へのネットワークを広げていった。

 そもそも「みかん」とはどんな果物を指すのか、みなさんはご存知だろうか。

 橙色の果皮を手で剥ける柑橘は、すべて「みかん」か。

 答えは否。

 一般的に、「みかん」とは、早ければ9月の終わりごろから遅いもので3月まで出回る、「温州(うんしゅう)みかん」のことを指すと言ってよいだろう。しかし驚くべきことに、温州みかん自体に100種類以上の品種があるため、俗に言う「みかん」は果物の品種ではなく一種のカテゴリーであると言える。

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柑橘カテゴリー分け。自作の小冊子「みかんのよみもの」より

 温州みかんと並んで昔からメジャーな「夏みかん」や「ハッサク」、近年よく見かける「デコポン」はどうだろう。これらは中晩柑(ちゅうばんかん)という仲間にくくられる。

 広く見れば、果汁としての使用がメインのレモンや柚子だって、香酸柑橘(こうさんかんきつ)といって、言うなれば温州みかんの遠い親戚みたいなものなのである。

 奥が深い柑橘の世界。私はますます魅了されていった。

※ 全盛期から7割も減っているみかんの消費量を上げることを理念に掲げ、2014年に発足した学生団体。関東のみかん好き学生が集まり、全国の産地と協同して新たな視点でみかんのPR企画を展開している。現在メンバーは約200名。

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