地域との連携で見えてくること ~学生の現地学習を通して~
東日本大震災の被災現場を視察(2012年10月20日撮影)
現地学習の効果
1995年の阪神淡路大震災で家族が被災し、復興事業に関心を持ったこともあって1本だけ関連する論文を書きましたが、その後は災害研究を専門としているわけでもない研究者が個人的な関心で現地調査をすることがためらわれ、あえてその論文を発展させることはしませんでした。しかし、2011年に生じた東日本大震災に関しては、被災県の隣接県に位置する大学で教鞭を握る教員として、震災を講義に取り込まなければならない必要性と義務を感じ、被災地の現地調査を行うようになりました。研究者としてではなく、大学教員として活動を始めてまず感じたのは、この状況を地図や統計を使って教室で伝えるのは無理だということでした。これが、僕が講義規模の学生を現地につれていき、現地学習をするようになったきっかけです。
予算的な問題から被災地での現地学習は単年度で終わってしまいましたが、僕自身が現地学習で多くのことを学びました。学生の現地調査は調査というよりは住民との会話であり、適切なコーディネーターがいて教員が十分に配慮すれば、住民といっしょに活動できること(この現地学習では震災発生当初から現地で活動していたボランティアの方がコーディネーターになってくれました)、学生の興味は多種多様であり、彼らの奇抜なアイデアが思いもよらない斬新な提案につながること、などなど。反面、十人十色の学生の行動や思いを一つに束ねることは不可能であり、学生間の日程調整や彼らのモチベーション維持にかかる労力はかなりなものになってしまうといった、継続していくために越えなければならない壁の高さを実感したことも事実です。
東松島市大曲地区の被災現場(2012年10月20日撮影)
2013年に山形大学の事業がCOC事業(地(知)の拠点整備事業)に採択されることによって、現地学習に関する費用的な問題はほぼクリアされました。残念なことに、活動は県内の連携自治体に限定されるという同事業の制約から被災地での現地学習を再開することは叶いませんでしたが、現地学習が大学教育に効果的であり、地域の活性化にも有効であることが明らかになっていましたので、連携自治体となった上山市に場所を移し、観光による地域再生をテーマにした現地学習を開始しました。上山市は、COC事業の連携自治体になっていたというだけでなく、大学からのアクセスが良く、学生の自発的な調査が可能であったという点が、その後の継続的な活動を可能にした要因の一つだと思います。
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