地域との連携で見えてくること ~学生の現地学習を通して~

山田浩久山形大学人文学部 教授

2017.02.14山形県

上山市での活動

 上山市の中心駅は、JRかみのやま温泉駅です。その駅名からも分かるように、近代に入ってからの同市の発展は市街地に湧き出る温泉に支えられてきました。学生の現地学習は2014年度から開始しましたが、上山市が抱える課題は地方都市に共通するものであり、僕は以前から同市をまちづくりや観光に関する研究のフィールドとして調査研究を行っていました。

地域との連携で見えてくること
上山市街地の地図 ★印はホテル・旅館の位置を表す

 現地学習を成功させるためには、現地に明るいコーディネーターの存在と、教員による入念な下調べが必須であることは被災地での活動によって得られた教訓です。上山市の場合は、自身の研究のためにお世話になった市の職員や観光物産協会のスタッフが極めて優秀なコーディネーターになってくれましたし、研究のために行ったフィールドワークが下調べになりました。そのため、被災地での活動に比べると、はるかに容易に現地学習のプログラムを立案することができました。

 簡単に上山市での活動をまとめておきますと、2013年度の現地学習では、学生が同市のホテルや旅館に宿泊し、実際に上山市を観光しながら既存の地域資源を探し出すことによって、同市観光の抱える問題を明らかにしていきました。2014年度の現地学習では、学生が上山市の地域資源を使って観光のモデルコースを企画しました。彼らは自分たちが企画したモデルコースを実際に体験することで課題を見い出し、それらを修正しながら国内旅行者向けの観光プランを作成しました。旅行プランを現地報告会で公表したところ、市内のホテル支配人様から同ホテルのホームページで販売しているオプショナル・ツアーの一つに加える提案をいただくことができ、2015年度の前期演習において本格的に商品化を進めることになりました。この商品は同年度秋季から公開されましたが、売り上げには至りませんでした。

 現地学習を大学の授業に組み込み、それを継続することによって生じる問題点の多くは、協力しても「フィードバックがない」ことによる現地関係者や住民の徒労感に依拠するものだと思います。僕は毎年テーマを変え、現地報告会は欠かしません。また、同じ調査はしないので、学生の活動を冊子にまとめて次年度の参考書にします。ですが、実質的な「フィードバックがない」ことに変わりはなく、上記支配人様からの提案には本当に感激しました。

地域との連携で見えてくること
上山市関連の報告書冊子

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