スノーモンキーをフックに山ノ内町の温泉街を活性化する「WAKUWAKUやまのうち」

2016.10.27長野県

観光まちづくり会社に地域の若手を取り込み、経営者人材を育成

 株式会社WAKUWAKUやまのうちのスキーム。銀行など経営や事業運営のエキスパートたちがそのノウハウを伝えながら、将来を担う地域の若手を経営者人材に育成
株式会社WAKUWAKUやまのうちのスキーム。銀行など経営や事業運営のエキスパートたちがそのノウハウを伝えながら、将来を担う地域の若手を経営者人材に育成

 この事業では、直営店舗の運営及び観光まちづくり会社としての情報発信を行う事業運営会社「WAKUWAKUやまのうち」と、未活用物件の取得・改修、賃貸等を行う不動産管理会社「WAKUWAKU地域不動産マネジメント」が分離されている。つまり、WAKUWAKUやまのうちの直営店の不動産は、管理会社からのサブリースという形式だ。これにより、他の事業者が地域に参入する際にも不動産のサブリースが可能となり、不動産管理会社が地域の不動産を一元的に管理することで、町並み整備にも統一感が生まれる。

株式会社WAKUWAKUやまのうち代表取締役の岡嘉紀さん
株式会社WAKUWAKUやまのうち代表取締役の岡嘉紀さん

岡:所有と運営を分けることは珍しいことではありません。また、まちづくりに不動産が関係してくる場合は、地域の金融機関が絡まないと難しい面があります。WAKUWAKUやまのうちで特徴的なのは、面的活性化に必要なことを一元的に取り組む仕組みであること、その活動を通じて、地域の若手などを将来を担う経営者人材に育てようとしている点にあります。

 実際に、直営の宿泊施設「AIBIYA」を運営する西澤さんは、WAKUWAKUやまのうちの取締役である。どのような施設、店舗にするかなどのアイデアは各運営者に任せながらも、岡さんや八十二銀行の担当者らの専門家が関わってしっかりとした事業計画書を作成し、経営のノウハウを伝えている。

岡:地域の若手が経営を志せるような仕組みをつくれば、地域にも活気が出てきます。それが『ひとづくり』です。いくらハードを整備しても、運営する人が育たなければ活性化になりません。

 まちづくり、ひとづくり、情報発信を一体的に行うことで、事業としての発信力が高まり、ストーリー性が生まれる。それが地域の魅力となって、新たな事業者や観光客を惹きつけるという好循環が生まれるのだろう。

 もう一つ、山ノ内のモデルで見えてきたことは、面的に活性化するには、エリアを特定する必要があるという点である。

岡:もちろん、山ノ内町全体で活性化できればいいですが、最初からすべてを行うのは難しい。また、離れた一軒一軒の物件を事業化しても、シナジーが生まれません。ここでは『かえで通り』に特定しましたが、訴求力、発信力、集客力の合理性からしても、ある程度小単位の面に絞ることが必要だと思います

ハード、ソフトによる正のスパイラルを構築する

 山ノ内町の観光のオンシーズンは冬場の12~3月だ。滞在環境の整備が完了した今、これからのオンシーズンに向けて、情報発信と集客に一層力を入れていく。

 その一つとして、徒歩圏内の飲食店や町内の顧客満足度の高い施設を紹介する「周遊マップ」を作成した。一見するだけで、1泊2日の宿泊でも十分に楽しめるコンテンツが山ノ内町にあることが伝わる内容となっている。さらに、HAKKOやCHAMISEも追加の改修を行い、メニューやサービスも充実させる。

 情報発信では、東京と海外に向けた対策をとる。
 バックパッカーの旅行客は、旅程を決めて来日しているのは約2割と言われ、ほとんどは東京に来てからその先の旅程を具体的に決めるという。東京のホステルに情報発信拠点を置き、多言語案内にリンクするステッカーなどを通じて具体的なアクセス方法を伝え、誘導することを狙う。

「snowmonkeytrip」ポータルサイト。12月~3月の繁忙期に向け、来訪が多い台湾とオーストラリアからの旅行客に対し、googleや現地のアドネットワークでの広告で訴求していく
「snowmonkeytrip」ポータルサイト。12月~3月の繁忙期に向け、来訪が多い台湾とオーストラリアからの旅行客に対し、googleや現地のアドネットワークでの広告で訴求していく

 海外に向けては、まずは、長野県への来訪が多い台湾とオーストラリアからの旅行客に対して、現地のメディアと連動した訴求を行うとともに、現地エージェントと連携したスキー、スノーモンキーのツアーへの組み込み等も行っている。ピーク前の11月に集中して、「snowmonkeytrip」ポータルサイトをgoogleや現地のアドネットワークでの広告で訴求していく予定だ。

岡:情報発信するにも、まず目的地として選択される準備ができていることが前提です。ハードを整備し、ソフトをつくり、集客する。これを繰り返し、集客の実績が生まれれば、新たに参入する事業者や物件を売りたいという人が出てくるのではないかと思います。そうすればさらに町並みが整い、発信力も強まります。

 この“正のスパイラル”を構築することが観光まちづくり会社の役割だと岡さんは話す。ハード整備後初めての冬を迎え、これからどのように価値の連鎖が生まれていくかが楽しみだ。

(取材・文/城市奈那)

リンク:WAKUWAKUやまのうち

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