スノーモンキーをフックに山ノ内町の温泉街を活性化する「WAKUWAKUやまのうち」

2016.10.27長野県

インバウンドに足りない機能を「かえで通り」に補完

 かえで通りに建つ観光案内所&カフェの「CHAMISE」
かえで通りに建つ観光案内所&カフェの「CHAMISE」

 WAKUWAKUやまのうちがまず着手したのが、滞在環境の整備だ。長野電鉄の終着駅である湯田中駅から続く「かえで通り」は、いわば山ノ内町の玄関口。かつては表通りだったが、近年は空き物件が目立つようになっていた。

 一方、このかえで通りに面する老舗の旅館は、それぞれ独自でインバウンド客を獲得できていた。そうした状況を鑑みながら、かえで通りを面的に捉えたときに、インバウンドに必要な機能として浮かび上がってきたのが、「案内所・カフェ」「ビアバー・レストラン」、「ゲストハウスやB&B」の3つの施設だった。

 機能の洗い出しについて株式会社WAKUWAKUやまのうち代表取締役岡嘉紀さんはこう話す。

岡:宿泊するには、1泊2日くらいその場で楽しめるコンテンツが必要。ある程度の滞在環境があって初めて周遊ができるので、まずはハードの整備を第一に考えました

 通りを周遊させる宿と飲食店を最初に整備し、そこから情報発信・集客に取り組む流れだ。

東京や白馬からの日帰り客が多かった山ノ内町。一方で、登録有形文化財に指定された趣ある老舗旅館「しまづや」などはインバウンド客も好調に取り込んでいた。かえで通りにレストランやカフェ、ホステルなどの機能を補完し、1泊2日でも楽しめる環境を整備した
東京や白馬からの日帰り客が多かった山ノ内町。一方で、登録有形文化財に指定された趣ある老舗旅館「しまづや」などはインバウンド客も好調に取り込んでいた。かえで通りにレストランやカフェ、ホステルなどの機能を補完し、1泊2日でも楽しめる環境を整備した

明治・大正からの建物を景観を守りながらリノベーション

「HAKKO」外観。地域の人に親しまれ続けるように、元の外観を生かし、色を塗り替えた
「HAKKO」外観。地域の人に親しまれ続けるように、元の外観を生かし、色を塗り替えた

ビアバー&レストラン「HAKKO」。解体時に発見された当時の備品や新聞などから連想し、大正ロマンをテーマにリノベーション 提供:WAKUWAKUやまのうち
ビアバー&レストラン「HAKKO」。解体時に発見された当時の備品や新聞などから連想し、大正ロマンをテーマにリノベーション 提供:WAKUWAKUやまのうち

 そのハード整備の第一号となったのが、ビアバー&レストランの「HAKKO」。2016年4月にオープンし、味噌・酒・麹など、長野の食文化でもある8つの発酵食品と地元食材を使ったメニューを提供している。元々の店舗は、明治時代から建つ旧青果店で、湯田中温泉の歴史や文化を知る地域の人たちと協議しながら、地元長野の建築家がリノベーションした。内観は、解体の際に発見された当時の新聞や備品などから連想し、大正ロマンをテーマにデザインした。外観は、地域の人にも親しまれ続けるように、元の外観を生かし、通りにあった色合いに塗り替えている。

カフェ&スペース「CHAMISE」。かつて若者が集う場所だった旧洋品店をリノベーションした。木を基調とした空間には、80インチの画面を設置
カフェ&スペース「CHAMISE」。かつて若者が集う場所だった旧洋品店をリノベーションした。木を基調とした空間には、80インチの画面を設置

 5月にオープンしたカフェ&スペース「CHAMISE」は、地域内外の事業者や団体とのコラボレーションを通じ、山ノ内町の観光情報や地域産品を発信する施設だ。かつて地域の若者が集う場であった旧洋品店を、木を基調とした広々とした空間にリノベーションした。中には、観光映像等を紹介する80インチの画面も設置されており、周遊に便利な電動自転車の貸し出しも行っている。

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