スノーモンキーをフックに山ノ内町の温泉街を活性化する「WAKUWAKUやまのうち」

2016.10.27長野県

外国人に人気の観光スポット「地獄谷野猿公苑」を有する長野県山ノ内町。スノーモンキーをフックにインバウンド客を増やそうと、観光まちづくり会社「WAKUWAKUやまのうち」が設立された。八十二銀行をはじめ県内すべての金融機関と地域経済活性化支援機構によるファンドを通じて金融支援を実行。まちづくり、ひとづくり、情報発信の一体化による面的な観光まちづくり事業が県内外から注目されている。

スノーモンキーで人気の「地獄谷野猿公苑」を有す山ノ内町

 スノーモンキー
ニホンザルは地球上で最も北に暮らすサル。温泉につかるサルを見ようと長野県山内町の地獄谷野猿公苑には多くの外国人観光客が訪れる

 雪の中、湯気が立つ温泉であたたまるニホンザル。
 この「スノーモンキー」見たさに、多くの外国人観光客が長野県を訪れている。1970年にアメリカの著名な雑誌「LIFE」に紹介されて以来、「地獄谷野猿公苑」のサルは世界中の人に知られるようになり、同苑は訪日外国人向けガイド「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」でも一つ星を獲得している。

 地獄谷野猿公苑以外にも、志賀高原、湯田中渋温泉郷など豊富な観光資源を有する山ノ町だが、観光利用者数はスキーや団体旅行が活発だった平成2年の986万人をピークに減少傾向にあり、平成27年は461万人とピーク時の約半数になった。また、スノーモンキーを目当てに訪れる外国人観光客は、その日に首都圏や白馬に戻ったり、北陸新幹線で金沢に向かったりと日帰り客が多く、インバウンド需要を十分に取り込めていない。

金融機関とREVICでファンドを設立、観光まちづくり会社を支援

 長野電鉄・湯田中駅から続く「かえで通り」。今年9月にZEN Hostel(中央)、10月にAIBIYA(左)と2つのホステルがオープンした
長野電鉄・湯田中駅から続く「かえで通り」。今年9月にZEN Hostel(中央)、10月にAIBIYA(左)と2つのホステルがオープンした

 こうした中、県内の観光産業活性化に向けて調査を行っていた地元の八十二銀行は、平成25年9月に山ノ内町で開催された「まちづくり研究会」で、地域と連携して観光振興へ取り組むことを参加者に提言。これに対し、地元の事業者ら約10名の有志が集結し、まちの観光活性化に関する検討会が開かれるようになった。その過程で、まちづくりを推進する組織の設立が検討され、平成26年4月に「合同会社WAKUWAKUやまのうち」が誕生した。

 しかし、この合同会社は検討会のメンバーが中心となって設立されたもので、地元の旅館や不動産会社など全員が本業を抱えているため、まちづくりに専念することが難しかった。また、マンパワーや資金力の面でも、活動に限界があった。

 そこで、八十二銀行では地域経済活性化支援機構(REVIC)に支援を打診。REVIC初となる、観光を軸とした地域金融機関との連携協定が同年10月に締結した。

 協定締結後、八十二銀行とREVICは長野県に本店を有するすべての地域金融機関と「ALL信州観光活性化ファンド」を設立した。観光まちづくりのモデルの実現に向け、ファンドを通じ、資金提供及び専門家によるハンズオン支援を提供する体制を整えた。ファンド設立においては、観光まちづくりのモデルのパイロット地域の第一号案件として、山ノ内町を選定。合同会社WAKUWAKUやまのうちは、REVICの専門家や、地元の若手をメンバーに迎え、平成27年8月に株式会社へ組織変更した。

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