地域文化に根ざしたツアーデザインのつくり方

井口智裕(株)いせん代表取締役、(一社)雪国観光圏代表理事

「住んでよし、訪れてよし」の地域ブランドづくりへ

 地域の価値を決め、ターゲットを設定したら、次はその価値をどのように顧客に提供するかである。

 本年度、雪国観光圏では30代から40代の旅館の女将や旅行会社の中堅社員を中心に男女7名でマーケティングのワーキングチームを構成した。現場の肌感覚がわかる彼ら都内でグループインタビューを実施し、ターゲットを象徴する架空の人物像(ペルソナ)を設定した。約半年間にわたり、その人物像が「雪国文化」を体感する旅行商品のストーリーを検討した。

 テーマ(ブランド価値)とストーリー(地域旅行商品)ができたら、次は役者(ツアーを提供する事業者)の設定だ。ツアーの中で雪国文化を感じていただくためには、役者の存在はもっとも重要である。酒蔵のご主人や冬支度をする地域のおばあさんに声掛けを行った。地域の生活そのものを体感していただくため、親戚を出迎えるような気持ちで和やかに対応してほしいと要望した。

 そして最後は販売である。モニターツアーを通じてなるべくペルソナ像に近い方々を中心に声掛けを行った。

雪国観光圏


雪国観光圏さまざまなモニターツアーを展開

 ここで気をつけたのは、料金もほぼ定価で案内することにしたことだ。
 造成したツアーを商品化して販売してくことが目的である以上、ターゲット設定と価格設定について現状に近い形で実施しなければ意味がない。補助金などが活用できる場合であっても、旅行商品そのものの値引きは行わなかった。定価でモニターツアーを実施することで、当然お客様からの厳しい指摘もいただくが、同時に修正しなければいけない点が明確になってくる。

 目の前の課題を一つ一つ改善していくことで、自分たちでできることとできないことも見え、自分たちでできないことは他の関係者に協力を仰ぐことで、結果的に地元でも認知度が上がっていった。

 コンセプトを決め、ターゲットを設定し、ストーリーを組み立てる。そして具体的な旅行商品に落とし込み、実際に販売を行ってみる。
 最初は小さくはじめたツアーも続けていくことで、地域独自の価値が見えはじめ、支持する顧客と地元住民の協力が得られる。

 まさに観光地域づくりの理念である「住んでよし、訪れてよし」の概念が形に結びつく一つのモデルといえる。地域文化に根ざした旅行商品を作り上げることは、まさに地域のブランドづくりそのものである。

雪国観光圏
雪国ナイト

 

著者プロフィール

井口智裕

井口智裕(株)いせん代表取締役、(一社)雪国観光圏代表理事

米国、東ワシントン大学経営学部マーケティング科卒業。旅館の4代目として家業を継ぎ、2005年「越後湯澤HATAGO井仙」としてリニューアル。2008年、プランナーとして「雪国観光圏」を立ち上げ、運営に尽力。2013年4月、一般社団法人雪国観光圏設立に伴い代表理事に就任。観光品質基準、人材教育、CSR事業など広域観光圏事業を中核的に推進している。雪国食文化研究所代表社員も務める。著書に「ユキマロゲ経営理論」など。

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