地域文化に根ざしたツアーデザインのつくり方

井口智裕(株)いせん代表取締役、(一社)雪国観光圏代表理事

DMOでブランドコンセプトづくりを

 昨今全国各地で地域が一体となって観光マネジメントを推進するDMO(Destination Management Organization)の必要性が問われているが、地域づくりの現場で実践しているケースはまだ少ない。民間企業であれば、経営者が最終的には責任をとることで事業を推進することができるが、それぞれ独立した立場の事業者の集まりである地域経営の現場では簡単にことが進まない。意見調整するために多くの労力と時間を必要とし、最終的には多数決によって意志決定されるものの、そのほとんどはすでに市場ニーズとは乖離しているケースをよく耳にする。

 2008年、新潟、群馬、長野の3県7市町村によって設立された雪国観光圏は地域連携型のDMO組織である。
 官と民がそれぞれ協業し、「100年後も雪国であるために」という理念を掲げ、持続可能な観光地域づくりを目指して活動を続けてきた。

 設立以来、地域のブランドコンセプトを長期にわたって議論し、2014年にようやく「8000年前から続く雪国文化」を地域のブランドコンセプトに設定した。さらに翌年には、そのコンセプトに基づいた地域旅行商品を作り上げた。


モニターツアーで冬支度をする地域の農家を訪ねる
モニターツアーで冬支度をする地域の農家を訪ねる

 スキー産業が当地の観光産業の目玉でもある雪国観光圏において、あえてスキーではなく、「雪国文化」に焦点を絞った背景には、地域文化に根ざしたブランドコンセプトこそがこの地域が生き残る唯一の方針であるとの考えがあった。

モニターツアーで訪れる古民家モニターツアーで訪れる古民家

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