新たな観光デザインの可能性について 体験観光による『人物観光』のすすめ

村上雅巳跡見学園女子大学マネジメント学部観光マネジメント学科准教授

2013.06.01福島県

人そのものを観光資源に

 地域資源を活かした観光地域づくりの重要性が指摘されている昨今、体験観光に、今後新たに「人」の概念が入るのではないかという問題提起をしたい。即ち、「地域の人そのものを観光資源化する」という全く新しい発想である。

 その地域で実際に様々な活動をしている人が観光素材で、その人に会いに行くことを旅行の主目的とする、まさにニューツーリズムである。それを「人物観光」と跡見学園女子大学では名付けている。
 ややもすると同じメニューになりがちな従来の体験観光に新たな視点を加えたものとも言える。人物観光の強みは決して金太郎飴にはならない、着地型旅行商品の可能性が高いという点である。

「八重の桜」を例にして

 具体例として、2011年の東日本震災後に本学観光マネジメント学科生がインターンシップで会津若松市を訪れ、風評被害に苦しむ同市の復興支援を申し出たのを契機に、昨2012年は同市と本学がパートナーシップ協定を結び、さらに連携を強め、同年末、(株)日本旅行等の協力のもとに跡見生の企画開発による産官学連携の旅行商品「会津若松 現代の八重に会いに行くツアー」(人物観光)が誕生した。

 これは、大河ドラマ「八重の桜」が会津若松に決まったからこの取り組みをしたのではない。風評被害に苦しむ同市を支援するため、観光を学んでいる学生として何か役に立てることがないかという純粋な気持ちから始まったプロジェクトで、実際に学生たちは同市にも何回も足を運び、いろいろな観光資源がある中で、学生たちがフォーカスしたのが、地域の「人」だった。

 そうこうしているうちに大河ドラマが決まり、新島八重のような人物が今の会津若松にはいるのではないかという発想のもと、「現代の八重を探そう」ということになり、行きついた先が、今回選ばせていただいた4人の女性であった。皆、ある意味、新島八重のような生き方をしてきた人、いわゆる会津魂を受け継いできた方々だった。

 この「現代の八重」たちから直に話を聴き、生き様を学ぶことにより内面の豊かさや美しさを磨き、今後の生き方の参考にしたいというコンセプトのもとに実現したのが今回の会津若松版「人物観光」であった。

 この人物観光はその地域に「人」がいる限りどこの地域でも取り組める可能性があるものなので、今後の地域の観光デザインの一つの新しい試みとして提案したい。

【参考】リンク:跡見学園女子大学の取り組み 

著者プロフィール

村上雅巳

村上雅巳跡見学園女子大学マネジメント学部観光マネジメント学科准教授

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