小さなまちのどこにでもある資源を魅力あるストーリーに変え、伝えるための12のコツ ステップ10 こんな時どうする!? 〜ガイド中のトラブル&失敗談〜
森のプログラム。お客さんの素敵な笑顔の裏で、ガイドはトラブルと戦っているかも・・・
観光まちづくりの現場の方が実践するための「ノウハウ」と「あり方、心構え」に関する連載記事です。知識ばかりでずっとしゃべっているガイドではなく、参加者がのびのびと楽しみながら、そのまちを好きになっていくためのガイド手法をお伝えしていきます。ガイドがどうやって参加者にまちを楽しんでもらうか。そのためにやるべきことはどのようなことかについて、12ステップで解説します。
みなさんこんにちは。愛媛県今治市を拠点に、ガイド活動やガイド養成研修を生業にしている菊間です。この連載もいよいよ10回目。残すところあと2回です。今までの9回は、いろんなテーマごとに「こうしたらいい」という手法や考え方を紹介してきました。しかし、そういった「成功体験」よりも、時には「失敗」から学べることも多いもの。そこで今回のテーマは「ガイド中のトラブル&失敗談」。
私が実際に体験したトラブルや若いころのほろ苦い失敗などをお伝えしたいと思います。
ガイド中に酔っ払い登場!
私はかつて、富士山麓や沖縄、新潟など全国でガイドをしていました。この話は、今から10年以上前、新潟での体験です。その時私は、親子連れのお客さんをガイドしていました。季節は初夏、ホタルが舞う頃の、ホタル鑑賞ナイトツアーでした。
夜のツアーの魅力は暗さと静けさ、そして神秘性です。そのため私が行うツアーでは、基本的にライトや明かりを持ちません。
最初はあまり見えませんが、やがて目が闇に慣れてくるようになります。そして、もう一つのポイントである静けさを十分に味わうために、お客さんにはしゃべらないようにしてもらいます。しゃべってしまうと日常と同じになり、せっかくの夜の魅力を味わえなくなってしまうのです。無理に「しゃべらないで」という指示を出さなくても、虫の声を聞いたり、風を感じたり、五感を使って楽しんだりしてガイドが雰囲気をつくっていけば、自然と静かになるものです。
夜のツアーでは、暗さや静けさ、神秘的な雰囲気を大事にしたいもの
そんなふうにていねいに雰囲気をつくりながら、ツアーはいよいよクライマックス。ホタルの登場です。私たちツアーの一行はホタル舞う小川へ、静かに静かに近づいていきます。
そこに、とある一団が近づいてきました。近くの宿泊施設に泊まっている中年男性のグループでした。陽気な調子で、どうも酔っ払っているようです。そして手に懐中電灯を持ち、大声でしゃべりながら近づいてきます。
「ホタルはどこだ? ほんとうにこんなとこにいんのか?」
「しかし暗いなー、何も見えんぞ!」
「ホ、ホタルぅ〜(田中邦衛風)」
などと、好き勝手に大声を出しながら私たちのいる方に近づいてくるのです・・・。せっかくつくってきた雰囲気が台無しです。仕方がないのでそのグループに近づき「申し訳ないんですが、ツアー中なので少し静かにしていただけないでしょうか?」とお願いしました。すると、
「なんだと! おまえ何者だ!?」
「何様のつもりだ!」
などと言いがかりをつけてくるではありませんか! あの時は正直参りました・・・。静かにしてほしいのですが、言い合いになればなるほど雰囲気はさらに悪くなってしまいます。ツアーのお客さんも不安そうな顔をしています。おまけにおじさんたちは、ライトでそこらじゅうをチカチカ照らしているのです。闇に慣れ、少しの光でもとらえられるようになった私たちの目には眩しすぎます。
そこで私は「すみません」と謝り、少し離れた場所に移動することにしました。フィールドを知っている私たちにとってはベストポイントではないのですが、ホタルは十分見ることができますし、お客さんも喜んでいます。なにより騒がしく、ライトがチカチカしている場所よりはずっとマシです。
このようにしてなんとかツアーを終えましたが、いやー、今思い出してもヒヤヒヤです。本当に現場では何があるかわからないものですね・・・。
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