“稼ぐ地域”を創造する道の駅の戦略発想 道の駅「うつのみやろまんちっく村」を事例として

松本謙(株)ファーマーズ・フォレスト代表取締役社長

2016.09.01栃木県

集客装置を生かす拠点型「着地型観光」の効果

 当社は「えにしトラベル(第二種旅行業)」(http://enishi-travel.jp/)の運営を通じて、道の駅発着型の着地型観光を展開しています。これらは、自社農場や生産者の農場をはじめ、さまざまな地域資源を生かしたツーリズムを道の駅を核として造成するものです。一般的な農業体験ツアーから、荒廃茶園の復活、祭りの復興、田舎暮らし・移住促進、獣害対策等々の地域課題と向き合うディープなテーマまで、バリエーションに富んだツーリズムプランを企画運営しています。特に、大谷石採掘場跡地を活用した多面的な地域価値向上を提案する「OHYAUNDERGROUND」(http://ohyaunderground.jp/)の取り組みは、昨年、TBSテレビの村づくりをテーマにしたテレビドラマ「ナポレオンの村」で、モデルの一つとして起用されました。

 着地型観光は、一般的に手間がかかる反面、収益になりにくく、大手旅行会社が参入したくてもコストが合わず参入しづらいため、民間企業として自走しにくい事業分野といえます。当社が本格的に着地型観光に取り組むことが可能となっているのは、まさに「道の駅」という拠点を核とした仕組みによるものです。

 道の駅「うつのみやろまんちっく村」では、こうした拠点型着地型観光の取り組みを推進することで、利用者の目的来園や再来訪率を高めるだけでなく、周辺地域の魅力発信やブランド化、観光ナビゲーターなどの地域人材育成、観光交流の促進に寄与しています。

大谷地域での採掘場跡地を活用した着地型観光
大谷地域での採掘場跡地を活用した着地型観光

道の駅を核とした「地域商社」戦略

 このように当社では「モノやコトを含めて地域そのものを売り込む地域商社」を目指して、平成21年より地域商社事業を立ち上げ、運営拠点を核として、産地直売や飲食提供のみならず、農産物・特産品等の中規模流通や交流型6次産業化の推進、生産振興、地域物流構築、商品開発、ブランディング、販売戦略、観光交流、さらには担い手育成支援、中間的就労支援、クラウドファンディング支援、経営診断までを一気通貫に行う仕組みを構築してきました。そして平成24年の道の駅供用開始と同時に第二種旅行業を登録し、着地型観光事業に本格参入することで、DMO機能をも包括した一気通貫型の「地域商社モデル」の創造に至りました。

 当社では、これからも「道の駅」のさまざまな可能性を模索しながら、常に新たなチャレンジを積極的に仕掛け続けることで、少しでも多くの地域の自立活性化に「道の駅」という機能活用の可能性を実感してもらえるよう、たゆまぬ活動と情報発信を心がけていきたいと考えています。

※当社の道の駅「うつのみやろまんちっく村」を核とした地域商社の具体的な展開については、政府広報番組「今こそ地方創生」第3回「稼ぐ×地方創生」(http://www.gov-online.go.jp/cam/chihou_sousei/event/tv/index.html)ならびに、『地方創生ビジネスの教科書』(増田寛也著、文藝春秋)においても事例紹介されておりますので、ご興味があればご高覧いただけると幸いです。

著者プロフィール

松本謙

松本謙(株)ファーマーズ・フォレスト代表取締役社長

農林公園ろまんちっく村(平成24年道の駅うつのみやろまんちっく村として供用開始)や特産品セレクトショップやアンテナショップなど直営10店舗をはじめ、農産物直売や特産品流通を幅広く展開。また着地型旅行専門の「えにしトラベル(第二種旅行業)」を展開し、栃木県発の地域商社として、国の地方創生モデルともなっている。一方で、6次産業化や農商工連携での研修講師、各委員など、日本全国のさまざまな地域での地域活性化プロデュース&コンサルに参画しながら、農業と食・地域資源の総合プロデューサーとして活動している。中小企業診断士、6次産業化プランナー、作新学院大学客員教授、認定農業者。

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