アニメ・マンガで観光振興は可能か?

山村高淑北海道大学観光学高等研究センター教授

2011.11.16

 筆者は近著『アニメ・マンガで地域振興』(2011年、東京法令出版)の中で、「アニメやマンガ等が地域にコンテンツを付与し、こうした作品と地域がコンテンツを共有することによって生み出される観光」のことを、「アニメツーリズム」と定義した。

 そしてこうした事例のうち、製作サイド・地域社会・ファンの三者が相補的な協力関係を構築できた場合、「まちおこし」にまで展開する場合があることを示した。

 こうした「アニメをきっかけとしたまちおこし」に成功した事例を分析してみると、多くの場合、製作サイドと地域社会が協力して「過去あるいは伝統を、現在においても価値あるものとして示す」ことに成功していることがわかる。

 そもそも我々は過去の歴史を、時間を遡って実体験することはできない。時間を遡れば遡るほど、我々は歴史を実感すること、イメージすることが困難になる。

 しかしツーリズムの観点から見て、魅力的な場所かどうかを決める要件のひとつは、その場所で歴史の流れ、時間の堆積を感じることができるかどうかにある。すなわち、歴史コンテンツが重層的に存在する場所に我々は魅力を感じるのである。実は歴史資源を活かして集客を図りたい地域にとっての最大の悩みのひとつはまさにこの「歴史をイメージすることの困難さ」にある。

 この点でアニメの持つ、「歴史を刺激的な物語として、視覚的に表現することのできる力」は非常に有効である。アニメはその表現形態において、現代のメディアを通して、我々が楽しめる形で、わかりにくい過去のイメージを効果的に表現し伝えること(現在の中に過去をイメージとして組み込むこと)に長けているのだ。

 こうした意味において、アニメツーリズムの成功事例には、まずは製作サイドの功績があると言える。つまり、製作サイドが、我々が心の中で直感的に問題に感じている、歴史・伝統との断絶を、現在の物語として娯楽の形で繋ぎ直すことに成功した点が大きいのである。

 例えばTVアニメ『戦国BASARA』はこの点でひとつのモデルを提示している。それまで知名度の低かった片倉小十郎をドラマチックに描くことで一躍有名にしたり、伊達政宗や真田幸村もこれまでにない斬新なイメージで表現することで、新たなファン層を獲得したりしている。

 また商品開発においても、アニメ作品と地場産品・伝統工芸品がタイアップすることで、アニメコンテンツと地域の歴史コンテンツとの重なりを効果的に演出し、現代と過去の両者をつなぎ、ひとつの時間軸での連続した物語として見せることに成功している。

 こうした演出により、これまでにない全く新しい層が、宮城県白石市(片倉小十郎ゆかりの地)や同県仙台市(伊達政宗ゆかりの地)、長野県上田市(真田幸村ゆかりの地)といった武将ゆかりの地を訪れるようになった点は、旅行動機形成手法としても注目に値するものである。

 紙幅の都合上、今回は更なる議論が叶わないが、拙著『アニメ・マンガで地域振興』ではこれ以外にも多くの事例を取り上げている。ご笑覧賜れば幸甚である。

著者プロフィール

山村高淑

山村高淑北海道大学観光学高等研究センター教授

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