“稼ぐ地域”を創造する道の駅の戦略発想 道の駅「うつのみやろまんちっく村」を事例として

松本謙(株)ファーマーズ・フォレスト代表取締役社長

2016.09.01栃木県

コンパクトシティの中核施設になる

 高齢化し、経済の縮退も進む我が国において、特に地方ではコンパクトシティという発想に基づいた「まちづくり」が、全国的にも注目されています。このコンパクトシティは、従来の中心市街地と郊外という考え方ではなく、集落やエリアレベルで、小さなコミュニティや施設インフラを整備する、高度経済成長期には発想されなかった、これからの時代に必要なサスティナブルな地域経営の考え方です。

 多くの場合、そうした小さなまちづくりにおいて想定される中核施設は、学校や医療施設、金融機関などの地域インフラであり、コンパクトシティ構想でもこうした公共インフラ整備の論議は活発に行われております。

 かねて私は、「道の駅」こそ、こうしたコンパクトシティ構想の中核施設に成り得るものと考えておりました。なぜならば、「道の駅」が所在する場所は、ほとんどが耕作放棄地の増大や担い手不足、高齢化の進展など、地域課題と向き合う郊外地集落の幹線にあります。その上で、道の駅施設はどのような小さな道の駅であっても年間数万人、大型施設になれば年間数百万人の利用がある地域の集客装置であり、ゲートウェイとしての機能があります。そして農産物や農産加工品などの販売や飲食の提供といった、地域資源を生かした価値創造の商流が存在します。すなわち、「道の駅」こそ、前述の公共インフラ施設では生み出せない、地域の利益還流を生み出す最前衛の戦略的中核拠点であると考えられるのです。

 しかしながら現在供用される多くの道の駅施設は、単なる通過型のドライブインとしての役割を踏襲することが多く、地域素材の販売や飲食提供こそあれど、単なる素材としての活用にとどまり、地域の生産者との向き合い方も単なる出荷者と運営者といった素なる関係性でしかない場合が、残念ながら多いのが現実といえます。

1 2 3 4

スポンサードリンク