「夜の華麗変身女子会ツアー事業」の奮闘記(現在進行形)

北村倫夫北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院教授

2018.10.15北海道

ステップ6:事業の立上げ準備 ~和とプラットフォームの形成~

 事業の骨格ができつつある中で、実際のオペレーションをやる上での、参加事業者間の確認と擦合せのための会合をもった。具体的には、料理コースメニュー数や価格帯(店間のレベル合わせ)、外国人客受入れ対応事項、予約受付・調整段階及び予約成立・決済段階の処理方法及び手数料、ホームページに掲載する情報のレベルなどを討議・確認し、合意をとった。この会合は、事業者の“和”をつくるという意味でも意義が大きかった。

 平行して、本事業のPRと予約獲得の重要なプラットフォームとなる、公式Webサイトを構築した(正文舎への依頼)。予算が非常に限られていたこともあり、シンプルかつ実効的なサイト構築を目指した(せざるを得なかった)。その際に特に留意した点は、ナイトライフにふさわしい色やデザイン、現実を伝えるデモ映像・画像の掲載、SNS(YouTube、Facebook等)との連動、必要最小限の多言語対応(日本語、英語、中国語)、わかりやすい予約申込み手続きの表示などである。

 以上の準備を踏まえて、2018年4月13日(金)夕方、本事業サイトのネット公開を開始、実質的なサービスリリースに至った。 

ステップ7:事業の広報・PR ~ネットメディアの有効利用~

 事業サイトの公開後は、広報・PR活動に集中的に取り組んだ。4月は、大学院の学生・留学生にSNSでの口コミPRを依頼。5月の連休後に本格的な広報・PRを開始した。まずは、プレスリリース資料を作成し、関係行政機関(北海道運輸局、札幌市役所等)、ネットメディア(プレスリリース配信事業者)、マスメディア(新聞社、放送局、雑誌出版社)、個人関係者へ送付、配信した。この中で、情報拡散の意味で効果の大きかったのはネットメディアである。

 ネットメディアを選ぶにあたっては、無料のプリスリリース配信サービスを提供しているメディアを探した。有料サービスが多い中で、ValuePress!とプレスリリースゼロが無料のコースを提供しており、それを利用した。配信は、いずれも2018年5月11日である。その配信後、すぐに広報効果が現れた。やまとごころ.jpのインバウンドNews「訪日客向けナイトライフツーリズムが活況、各地で取り組み進む」の中で本事業が紹介される(5月21日付)。「観光Reデザイン」にも記事が掲載される(5月28日付)。その後、北海道新聞からも取材を受け、記事「外国人客に照準 札幌の夜観光充実」の中で取りあげられる(7月3日朝刊)。

 このように、一次ネットメディア(プレスリリース配信サービス)への投稿・配信により、二次ネットメディア(ネットニュース、ネット記事)やリアルメディアへ拡散していくというメカニズムを利用することが、効果的な事業広報につながる。

「夜の華麗変身女子会ツアー事業」の奮闘記(現在進行形)
前菜からデザートまで全7品が楽しめる「創作日本食コース」、提供店「maruyama檀」

「夜の華麗変身女子会ツアー事業」の奮闘記(現在進行形)
秋田県産の比内地鶏など、各地から取り寄せた新鮮な旬の食材を炭火焼きで楽しめる「焼き鳥日本食コース」、提供店「しろ」

「夜の華麗変身女子会ツアー事業」の奮闘記(現在進行形)
すべての皿に「北海道」の旬の食材を使った「創作ビストロコース」、提供店「ビストロ円山ハル」

 

ステップ8:事業の壁と軌道修正 ~「なぜ?」と「次の一手は?」の問い~

 さて、順風満帆のすべり出し、後は予約が入るのを待つのみと楽観していたが、やはり、「現実はそう甘くはなかった」のである。広報・PRにお金をかけなかったため、初期にはそれほど予約は多くないと予想していたものの、2018年7月末時点で「予約申込件数ゼロ」の状況。そろそろ、何らかの対応策が必要と判断し、いくつかの手立てを講ずることにした。

 まずは、「なぜ?」の仮説設定。これまで、お金をかけない国内広報・PRは、それなりに成果を挙げている(本事業の知名度は上がっている)。にもかかわらず、海外からの申込みがない理由は、①海外向け広報・PRがうまくいっていない、②そもそも本事業への需要がない、③その他未知の要因、の3つのうちのどれか。私(北村)の見立ては「理由の①が原因、海外へのネット配信・PRを強化すべき」である。

 その仮説を踏まえて、「次の一手は?」(打開策)を考え、実行に移しつつあるというのが最新の状況である。その一つとして、ある大手旅行会社に勤務している本学院卒業生(中国人)に依頼し、中国人向けの観光サービス情報サイトに本事業の情報を掲載することを検討中である。

おわりに: 本事業は、To be continued(続きはまた今度)である。

著者プロフィール

北村倫夫

北村倫夫北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院教授

1981年北海道大学経済学部卒、同年野村総合研究所入社。主に都市地域政策、公共経営、事業支援の領域での国・自治体からの受託調査研究に従事し、2017年2月に同社を退職。
2007年より北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院の客員教授を経て、2017年3月より現職。主な著書・論文に、『情報世紀の育都論』、「自治体に求められる戦略的広報のススメ」(『自治体PRガイド』)、「北海道をでっかくマーケティングするための接近方法」(『ほくよう調査レポート』)など。

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