「夜の華麗変身女子会ツアー事業」の奮闘記(現在進行形)

北村倫夫北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院教授

2018.10.15北海道

ステップ1:事業のアイデア・ジェネレーション ~観光アイデアコンテストへの提案が原点~

 コトの発端は、札幌商工会議所主催の「観光アイデアコンテスト(2017年)」に、北大チーム(北村が演習として指導)が参加し、「優秀賞」を受賞したことから始まる。同コンテストのお題は、「札幌を訪れる観光客に“夜”や“朝”を楽しんでもらうための新たな観光メニューを提案すること」であった。

 わが北大チームは、「札幌の新しいナイトライフ・ツーリズムの創造に向けた観光メニュー」として、「魅惑のショービズツアー」「癒やしの温泉ショートツアー」「変身の女子会ツアー」の3つの事業を提案した。そこで掲げた「変身の女子会ツアー」が本事業の原点である。提案サービス内容は、現事業とほぼ同じであり、チームの中国人女子留学生たちが「需要はある」と判断したものである。

 このように、まずは、タネとなる観光事業アイデアの創出が必要であり、本事業では北大の演習現場でそれが生まれた。地方には大学があり、留学生も多くいる。事業のアイデア・ジェネレーションに大学を巻き込むのも一つの有力な手段である。 

ステップ2:事業の座組み ~やりたい人のみを集める~

 アイデアは形にしなければ始まらない。形(事業)にするのは人(事業者)である。ある時、札幌の美容院オアシスあんくの代表O氏が、私の研究室を訪ねてくる。趣旨は、「美容・エステビジネスを中国で展開したいのでアドバイスがほしい」であった。これに対して私は、「いきなり中国進出はリスク大。まずは、札幌で中国人観光客向けの美容ビジネスを成功させてから進出を考えるべき。たとえば、“変身の女子会ツアー”はどうか」と提案した。O氏より「挑戦してみたい」との言明があったので、協力を約束した。アイデアを担いでくれる事業者がいるので、実現性が高いと判断したからである。

 次に必要であったのは、事業の「座組み」(実効的参加メンバー)を決めることである。当初は、よくある「産学官研究会方式」を試みた。「〇〇事業推進研究会」の設置を企画し、旅行会社や行政等へ打診した。しかし、すぐにダメだと判断した。その理由は、オブザーバー参加の希望は多いが、当事者にはなりたがらないからである。

 事業を実際に手がける人を中心に座組みしないと動かない、という簡単かつ重要なことを学んだ。方針を変え、個人的なつながりをもとに、一本釣りに近い形で、参加事業者を探した。その結果、事業スタート時点での構成メンバーは、北海道大学大学院 国際広報メディア・観光学院<全体プロデューサー>、オアシスあんく<美容院>、maruyama檀<和食店>、しろ<焼き鳥店>、ビストロ円山ハル<ビストロ店>、プレミアム北海道<海外予約代行>、正文舎<Web制作>となった。

 このように、事業原案を示し、それに熱意をもって賛同し参画する事業者、すなわち「やりたい人」のみを集める。これが座組みの基本である。

ステップ3:事業のスケジューリング ~かなり緩めに想定~

 事業を進めるには、スケジュール設定が必要である。当初の予定は、①初期準備段階(2017年6~9月:事業企画立案、事業立上げ調整、デモ)、②離陸準備段階(2017年10~翌年3月:参加事業者間調整、追加デモ、ホームページ構築、事業概要資料作成)、③事業開始段階(4月上旬:サービスリリース、広報・PR)であった。精緻な線表などつくらず、期限も決めず、極めてラフなスケジューリングとした。なぜなら、参加事業者はそれぞれ本業があり、その合間をぬって臨機応変に進めることが実効的であったからである。

1 2 3 4

スポンサードリンク