連載 小さなまちのどこにでもある資源を魅力あるストーリーに変え、伝えるための12のコツ ~ステップ3 ガイドのためのフィールド調査 事前に確認しておきたい4つのポイントとは?~
下見と本番で、状況がかわることを予測する
4つ目の視点は、「本番では想定外のことが起こる」です。下見時に十分な空間把握を行い、時間も考え、危険も考えた。しかし時に、本番では全く状況が変わることがあるのです。それをも想定しておくことが必要です。
例えば以前、こんなことがありました。愛媛県のとある小さな島でガイドをしていたときのことです。そこは車も走っておらず、橋もかかっていない、高齢の住民が10件ほど暮らす、穏やかでのんびりとした「時の止まったような」島です。このような島なので大きなリスクはなく、前日に下見も十分に行い、安心してツアールートを決定しました。
そしていざ本番。お客さんと一緒に島に渡ってみると、なんとメインの活動場所として想定していた場所に釣り人がいて、竿が何本も立てかけてあるではないですか! 釣り人は針のついた仕掛けを投げ込むため、そこでの活動は断念せざるを得ませんでした。
この時は、下見で少し離れた場所に、ふさわしい場所を見つけてあったので、拠点をそこに移し、無事にツアーを終えることができました。しかし、その予備候補地を見つけていなかったらどうなっていたでしょうか? 小さな島なので他に逃げ場はありません。そう思うとゾッとします。
島でのツアー風景
このように、「本番では想定外のことが起こる」とあらかじめ予測しておくことが重要です。それに対処するためには、メインの活動場所、内容だけでなく、常に第2、第3の「次善の策」をあらかじめ講じておくことが必要です。
また、時間と人にゆとりを持たせておくことも大切です。時間に追われると、ゆとりがなくなって事故が起こりやすくなります。何かトラブルがあっても対応できるようゆとりを持ったスケジューリングをしておきましょう。「人」にゆとりを持たせておくこともとても大事です。何もかも一人でやろうとせず、万一のためにサブスタッフを含めた二人以上の体制でガイドに臨む、事故が起こった時のために本部体制を整えておくことなどは、安全確実にツアーを遂行するために不可欠な要素です。
このように、下見の時点で最悪の事態を想定し、備えるようにしましょう。備えあれば憂いなし。十分な下見と調査に加え「ゆとりを持たせたスケジューリング」「何があっても一人にならない」を肝に命じ、万全の体制で本番に臨むようにしましょう。
調査と準備をしっかりすれば、何が起きても大丈夫
■著者プロフィール
1974年生まれ。「一般社団法人をかしや」代表理事。環境教育と自然ガイド(インタープリテーション)が専門。ロープワークやナイフワーク、火起こしなどアウトドアスキル全般も得意。20代はじめに猿岩石に影響されバックパッカーとして東南アジアを巡る。その後、富士山麓、沖繩、名古屋、新潟など全国で自然に関わる仕事をしたのち2008年より愛媛県今治市に移住「をかしや」を起業。自然体験のノウハウをベースとした、行政向け、企業向け、一般向け研修を多数実施。「まごころこめて、ほんものを提供する」がモットー。
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