ジオパーク認定を活用するための整備に取り組む萩ジオパーク構想推進協議会 ジオパーク専門員の白井孝明さんに聞く

白井孝明萩ジオパーク構想推進協議会事務局萩市総務企画部ジオパーク推進課ジオパーク専門員

2018.04.02山口県

ジオストーリーを分かりやすく伝える人材を育成する「萩ジオプランナー講座」

 白井さんが萩ジオパーク構想内で提供するプログラムは、地形や地質が好きなマニアを対象とするものではなく、一般人でも楽しめるジオツアーである。そのためには地形や地質がどのように萩の風土や文化と関係しているか、つまり「ジオストーリー」を分かりやすく伝えることができるガイドとプランナーを育成する必要があると考えた。それが萩ジオマスターの認定者を対象に、2018年2月3日と4日に開催した「萩ジオプランナー講座」である。

ジオパーク認定を活用するための整備に取り組む萩ジオパーク構想推進協議会 ジオパーク専門員の白井孝明さんに聞く
石切り場の跡が残されている「笠山」。1万年前に噴火した溶岩の上を歩いている

 初日のガイド養成講座では、全国各地で体験を通じて分かりやすく「伝わる」ための技術を伝えている一般社団法人をかしや代表理事菊間彰氏が講師を務めた。

 今回伝えたいジオストーリーは以下の2つである。
①江戸時代、城下町の石垣は笠山から切り出された石を使用していた。
②約1万年前に噴火したマグマのしぶきが降り積もり形成されたのが笠山で、そこで採取される石は溶岩石である。 

 講師の菊間氏は城下町と笠山の溶岩石をどのように参加者へ伝えたのだろうか。その一例をここで紹介する。

①笠山で参加者を5つのグループに分け、各グループに「白緑(びゃくろく)」「沈香茶(とのちゃ)」「金茶(きんちゃ)」と日本の伝統色が書かれた3枚のカードを渡し、カードとそっくりな色のものを探すよう菊間講師が指示。

ジオパーク認定を活用するための整備に取り組む萩ジオパーク構想推進協議会 ジオパーク専門員の白井孝明さんに聞く

②各グループが集めてきた葉や石などをテーブルに一つずつならべ、どのグループが一番そっくりな色を探してきたかという答え合わせをする。
 白緑ではコケが付着した黒石を探すグループが多く見られた。

ジオパーク認定を活用するための整備に取り組む萩ジオパーク構想推進協議会 ジオパーク専門員の白井孝明さんに聞く

③次は笠山から城下町の高杉晋作広場へ移動。
 菊間講師は各グループに紙製の黒いフレームを渡し、インスタ映えするスポットを半径2~3キロの範囲で探すよう指示した。各グループが見つけたスポットを巡り、にぎやかな雰囲気で見てほしいポイントを紹介していく。

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④各グループの紹介が終わると、菊間講師は高杉晋作立志像のそばにある大きな石にフレームをあて、白緑のカードを見せた。
 先ほど笠山で、白緑にそっくりな色としてみんなが集めた石が、この広場にある大きな石と同じものだということを紹介する。
 そんな流れでの展開であった。

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 石や木などまちにある資源を活用し、参加者に考えさせ、話をさせて、歩かせるという体験を通じて、まちの魅力に気づいてもらうガイド手法を菊間氏は伝えていた。参加者からは「指示されたテーマをクリアするためにまちをしっかり見ることになるので、萩を印象づけることができる」「子どもや外国人など、誰にでも萩の魅力を伝えることができるのでぜひやってみたい」という声が寄せられた。

 2日目は徳山大学准教授の柚洞一夫氏を講師に迎え、①ジオパークをどうすればもっと一般の人に楽しんでもらえるかについての講義、②城下町と溶岩をつなげるという「ジオストーリー」の組み立て方を学ぶ、③どんなテーマやメッセージでジオツアーを企画すれば、大地と人のつながりをわかりやすく伝えることができるかについてグループワークで学んだ。

白井:3月にはジオプランナー候補生が主体となって企画や準備、ガイドを行うモニターツアー『萩城下町は‘3’から始まった?!』を開催しました。商品化までには課題もありますが、それを乗り越えようという強い気持ちが皆さんに芽生えています。今後も月1回のペースでモニターツアーを実施し、知識や技術などを磨き上げていきたいですね。

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