「店を通じて何を成し遂げたいか」モノを売るために必要なコンセプト作り メソッド・山田遊さんインタビュー(前編)
観光地の土産店は地産の商品への意識をもっと高めるべき
――観光が団体旅行から個人旅行にシフトする中で、観光地の土産店の存在もだいぶ変わってきています。
山田:最近は観光地の土産店の仕事も増えています。
ただ、とても地元産とは言えない商品を扱っている店が多いのも事実です。名前や地名だけを変えて同じお菓子を売ることはまだよくありますし、地元で作っているにしては安すぎないかと勘繰ってしまうような商品も多い。
今まで、売り上げを第一に考えるあまり、なかなかそこから脱却できないことは理解できますが、大切なのは、そのことに対して問題意識を持てるかどうかです。無意識にしろ、結果としてはお客さまを騙しているわけですから。
今はSNSで、「この店がこんなモノを売っていた」と消費者側で発信することも容易です。ただ売っているだけだと店側は思っても、それは理由になりませんし、結果として店のブランドも傷つけることになります。
やはり、地元の良いモノをしっかり選別して、遠方から来てくれたお客さまにちゃんと紹介すること。彼らが住む場所にその地で産まれたモノを届けて、地域の魅力を伝えること。それが今後の土産店の役割だと思います。
実際に店では、特筆すべき内容をPOPに書いて、意識的に差をつけています。例えば、農家さんが無農薬で育てているお米だったら、どんな苦労をしながら育てているか店のスタッフさんでも書けますよね。接客型ではない店では、こうやってモノの背中を押してあげることで、自然とお客さまが手に取るように仕向けていきます。
150年余りの歴史を誇る城崎温泉「西村屋」(兵庫県)の「西村屋ホテル招月庭」に新たにオープンしたセレクトショップ「さんぽう 招月庭」。メソッドが商品MDを担当。Photos:Masato kawano / nacasa & partners
西村屋が提案する新しい食のブランド「さんぽう」の商品や地域のアイテムを陳列。空間構成によって商品を美しく見せている。Photos:Masato kawano / nacasa & partners
――店では色々なメーカーの商品を置くことになりますが、統一感の出し方などで工夫すべき点はありますか。
山田:意外とそういう部分には強くこだわっていません。確かにパッケージのデザインがひどいと、並べるときに「ちょっとつらいな」と思うこともありますが、雑然とした感じをきれいに見せるよりも、地元の良いモノを誠実に集めることの方が優先順位としてはるかに高いです。見え方などは「環境」によってだいぶ変えられます。
城崎温泉の老舗旅館西村屋の西村屋ホテル招月庭内にオープンした「さんぽう 招月庭」では、羽田空港内のショップの内装設計なども手がけている松井亮さんがその環境を上手く作ってくれました。雑多感を減らすには物量を減らすしかないですが、物量を減らすと土産屋としてはなかなか成立しなくなるので、そこはバランスが必要です。今までは在庫をすべて積んで商品を見せている店が多かったですが、細かい部分を調整すればボリュームは保ちつつ、かなりすっきりと見える環境が作れます。
*後編へ続く
(取材・文/城市奈那)
■取材対象者プロフィール
東京都出身。南青山のIDÉE SHOPのバイヤーを経て、2007年、method(メソッド)を立ち上げ、フリーランスのバイヤーとして活動を始める。現在、株式会社メソッド代表取締役。
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