子連れ旅行に優しい国へ

久保美智代旅する世界遺産研究家、日本イコモス国内委員会会員

2015.03.16

観光地 ベビーカー優先の入り口、子ども向けクイズラリー

ベビーカー優先入り口の博物館(ドイツ)

 ドイツの首都ベルリンにある世界遺産・博物館島に行った時のことです。小雨の降る中、人気のペルガモン博物館には長い行列ができていました。ベビーカーを押しながら並んでいると、係員から声をかけられました。別の入口から優先的に入れてもらったのです。ベビーカーだけでなく、車いすや体の不自由な方のために設けているのでしょう。並んでいる人たちから厳しい視線を受けることもなく、優しい社会だと思いました。

ドイツ・ベルリンにあるペルガモン博物館にはベビーカーで訪れた
ドイツ・ベルリンにあるペルガモン博物館にはベビーカーで訪れた

母の日には母子は無料の博物館(オーストラリア)

 オーストリアに行った日は偶然、5月の第2日曜日、そう「母の日」でした。ベビーカーを押しながら博物館に入ると、「今日は母子が一緒に来ると無料です」と言われました。母と子が一緒に過ごせる時間のプレゼントなのですね。母親であることが認められたような気がして、素敵だと思いました。当然、夫の分は支払いましたが……。

豪州シドニーのハイドパーク・バラックスではクイズラリーに挑戦
豪州シドニーのハイドパーク・バラックスではクイズラリーに挑戦

親子が一緒に見て学べるように展示を工夫

 ただ、博物館の展示は小さい子にとっては難しい場合もあります。ノルウェーの世界遺産の鉱山町レーロースに行った時のことです。精錬所跡の博物館には、クイズやスタンプラリーが用意されていて、全部答えると小さな鉱石がプレゼントされました。シドニーにある囚人の歴史や生活ぶりを展示したハイドパーク・バラックス(世界遺産)でもクイズラリーがあり、囚人の足かせをはめたり、寝ていたハンモックに横になることができたりと体験型の展示が分かりやすかったです。難しいテーマだけに、親子が一緒に見て学べるよう工夫しているのですね。そもそも大人と子どもの興味は違うので、ハワイのリゾートホテルでは、遠足や工作などのキッズプログラムが用意されていて、子どもを預けることもできます。

 もう一つ、観光地でうれしいと思ったのは、ファミリーチケットの存在です。例えば、大人2人+子ども1人分の料金で設定されていれば、それ以上、子どもが何人いても無料。日本では子どもが増えるほど、支払いが多くなりますが、これなら子どもが大勢いる人の方がお得。せっかく家族で出かけたいと思っても経済的な負担はブレーキをかけます。少子化対策としても良い考え方だと思いました。小さい頃から伝統文化や芸術、歴史的建物に触れることは、その担い手を育てることに繋がりますし、日本の良さを無意識に知ることにもなります。「イタリアでは子ども向けのオペラがあり、小さい頃から親しんでいる」という話を聞き、その重要性をますます感じました。

 日本の観光は、2020年の東京オリンピックに向け、シニア層、外国人とターゲットを広げていますが、ファミリー層はまだまだこれから。子連れ旅行は親や祖父母など大人数で来ることもありますのでビジネスチャンスがあると同時に、家族連れに優しい国をアピールするには絶好の機会です。そして、「お母さんにやさしい国ランキング」の上位になってほしいと願います。

著者プロフィール

久保美智代

久保美智代旅する世界遺産研究家、日本イコモス国内委員会会員

旅する世界遺産研究家、日本イコモス国内委員会会員
愛媛県八幡浜市出身、愛媛大学卒。(株)愛媛朝日テレビ開局に伴い、アナウンサー第一期生として入社。その後、世界遺産に魅せられ、50カ国以上、380カ所の世界遺産を訪問。奈良、姫路、京都に住まいを移し、世界遺産の魅力を研究。その成果を講演会や執筆活動を通じて、全国に伝えている。現在、2児の母でもある。

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