自治体等が実践すべき戦略的な観光広報とは

北村倫夫北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院教授

2014.12.01

今なぜ、戦略的な観光広報が必要か

 訪日外国人2000万人時代を迎えた今、外国人観光客や国内リピーター観光客をいかに地方へ誘客していくかが、地域振興のカギを握る。そのために、国内外をターゲットにした戦略的な観光広報の展開が、今後いっそう重要になる。

 地方における観光広報の中核となる媒体は、自治体や観光協会(以下、自治体等と呼ぶ)のホームページ(以下、HPと呼ぶ)やSNSなどの電子コミュニケーション媒体である。自治体等の観光広報HPの質は一昔前と比較するとかなり向上してきており、最近ではSNSを観光広報に用いる自治体も増えている。

 しかし、必ずしも訴求力・誘客力の高い戦略的な観光広報が展開されているとはいえない状況にある。したがって、自治体等の戦略的な観光広報の展開に向けて、まずは中核媒体であるHPやSNSの革新が求められる。

自治体等における観光広報の問題点

 現在、自治体等の観光広報(ここでは、HP広報に論点を絞る)に共通してみられる主な問題点は、以下のとおりである。

(1)細分化する観光目的に対応した情報提供がなされていない
 観光客の観光ニーズ(目的)は、伝統的な自然、保養、歴史観光等に加えて、産業、芸術文化、科学、エンターテイメント、スポーツ、イベント観光など細分化しつつあるが、具体的な観光目的別にパッケージ情報を提供しているHPの例は少ない。

(2)観光広報の訴求ターゲット(誰に対して)があいまいである
 観光客と住民では提供すべき情報が全く異なるが、自治体等のHPでは、「観光客向け」と「住民向け」の区別のない例が多い。また、リピーター、長期滞在者、個人客など観光客のターゲットを明確にして情報提供している例もほとんどない。

(3)観光情報の多くは供給者側の情報でありバランスに欠ける
 観光業者が提供する商品やサービスの情報は多いが、「質の評価」に係る情報、観光客の声(観光施設・サービスへの感想・満足度等)などは原則HPには掲載されない。

(4)観光広報HPはポータルサイトとしての機能が低い
 HPの多くは、観光にかかわる事実情報の提供にとどまっており、サービス予約、コミュニケーションなどの観光ポータルサイトとしての機能を十分に持っていない。

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