鉄道新時代と観光地域活性化に関する一考察 「鉄道のチカラ(鉄道力)」とは

崎本武志江戸川大学社会学部現代社会学科准教授

2015.05.01鳥取県

鉄道会社の力、自治体・住民の力

 この日は若桜鉄道の山田社長のほか、由利高原鉄道の春田啓郎社長、山形鉄道の野村浩志社長、ひたちなか海浜鉄道の吉田千秋社長、いすみ鉄道の鳥塚亮社長ら、公募で社長に就任した全国の第三セクター鉄道の社長が集結したコンベンションが開催された。基調講演では関西大学経済学部の宇都宮浄人教授から社会資本としての鉄道の優位性とヨーロッパを中心に世界的な潮流として鉄道が評価されている点について述べられ、各社長に宇都宮教授、JR西日本の松岡俊宏米子支社長が登壇したシンポジウムでは、各社における地域を挙げた取り組みについて熱く語られた。

 公募社長の大きな特長は、ファシリテーターとなって社員や地域を動かし、限られた予算の中で創意工夫を重ねている点にある。譲渡を受けるなどして得た車両や固有の設備を磨き抜き、改良を重ねた上で物語性などの付加価値をつけて送り出す。ホスピタリティ性の向上に努め、ひとつでも多くの「名物」「物語」の創造に勤しんでいる。
 これに呼応して沿線自治体は人と資金を援助し、地域住民は清掃や花壇植栽など駅内美化に努め、サポーターズクラブなどを組織してパークアンドライドなどによる乗車促進など、地道な努力を継続している。

 この二つの力こそが「鉄道のチカラ(鉄道力)」である。日本政府および日本国民は今こそ「鉄道のチカラ(鉄道力)」を自覚し、鉄道を軸とした観光による地域活性化の波動を起こし、資本投下を含めた活発な援助促進を望みたい。

著者プロフィール

崎本武志

崎本武志江戸川大学社会学部現代社会学科准教授

江戸川大学社会学部現代社会学科 准教授 崎本武志
日本交通公社(現・JTB)、LEC東京リーガルマインド大学専任講師、大阪観光大学准教授を経て現職。交通・宿泊・旅行業を中心とした、観光・ホスピタリティ産業に関する研究を広範囲な観点から展開。主な著書に「現代の観光事業」(共著)。

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