境界協会の主宰・小林政能さんに聞く! 境界線の魅力とまちづくりへの可能性

小林政能境界協会主宰

2017.05.02

境界協会

参加者がそれぞれの視点で楽しめるフィールドワーク

 境界線は、あくまでも地図上の線。実際に境界線が目に見える形で引かれることは稀である。しかし、一度境界線を意識すると、これまで見過ごしていたものに気付く。

小林:境界に意識を向けると、ずっと目の前にあったのに今まで目に入っていなかったことや、こんなに多くの情報が身の周りにあるということに気が付きます。一度フィールドワークに参加された方は、自分の住んでいる地域でも、境界線にまつわるものが気になるようになります。フィールドワークは全国どこでもできるので、興味を持った方への感染力がものすごく強いのです。そして、その場所や条件によって見方を変えることができますし、人によって面白いと思える部分が異なるため、とても奥が深いです。

小林:また、これまでの地図は等高線が入っていて見慣れない人にとっては分かりにくいという問題点がありました。しかし、最近では高さによって色分けされた3次元の地図がでてきました。さらに、3次元の地図に時間軸を加えた4次元の地図というものもあり、携帯電話やタブレット端末などのアプリで簡単に見ることができます。私たちは「等高線からの解放」と呼んでいますが、このように地図が見やすくなったことも、フィールドワークへの参加者が増えた要因の一つだと思います。

 フィールドワークは、3次元の地図や、明治時代などの昔の地図を活用しながら行われている。そのため、境界線が好きな人だけでなく、地形に興味がある人、歴史に興味がある人など、参加者それぞれが好きな分野からの視点で楽しむことができる。

どんな場所でも必ず魅力がある

 境界をめぐるまち歩きは、日本全国どこでも楽しむことができる。小林さんは、地方に住んでいる人こそその土地の魅力に気付くべきと語る。

小林:住むまちを知る意味でも、どこまでが自分のまちなのかを知ることがまちおこしのベースにもなるんじゃないかと思います。地方に行くと、「ここには何もない」と言われることがありますが、その土地に住む人々にとって当たり前のことでも、外から来た人にとっては特徴と思えるものが必ずあるはずです。自分のまちを鳥瞰的、客観的、地形的、時間的に、さまざまな目線で見ると、その地域の魅力が浮かび上がってくるのではないでしょうか。

 さまざまな視点で多くのまちを見てきた小林さんだからこそ、“どんな場所でも魅力がある”ことに気付くことができたのだろう。有名な観光地でなくとも、探せば何か必ず特徴があり、それがその土地の魅力になる。それは、境界線に関するものかもしれないし、何の変哲もない風景かもしれない。外から訪れる観光客が何に興味を持ち、何に魅力を感じるのか、地元の人々がそれを知ることが大切なのである。

 最後に、今後の活動について聞いた。

小林:水上にある境界線は見に行くのが難しいので、今度は船で境界線を見に行く企画をしてみたいです。日本最西端の与那国島にも行きたいですね。

 今後も、どんどん新しいことに挑戦していくようだ。小林さん、そして境界協会の活動に、注目していきたい。

(取材・文:井手真梨子)

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