極上のアクティビティ。銭湯が観光の舞台に 全国公衆浴場業生活衛生同業組合連合会 近藤和幸さん

近藤和幸全国公衆浴場業生活衛生同業組合連合会理事長

2017.03.06東京都

外国人客にも入りやすく

 はすぬま温泉に最初に訪れ始めた外国人客は、蒲田に住む人々だ。しかし「何をどうしていいかまるっきりわからないようで、目をきょろきょろさせていた」と近藤さんは話す。近藤さんたちも最初はどうしていいのかわからなかったそうだ。そこで、自分が日本語がわからない外国人観光客だったらどう思うか、考えるようにした。

近藤:まず、屋内に上がるときに靴を脱ぐ文化があることを知らない。銭湯を利用するまでにあるいろいろなハードルをどう低くするかを考えたときに、指差し案内マニュアルや入浴マナーを案内する掲示があるといいと考えました。それから、入り口でウエルカム! と声をかけられれば、入りやすくなるだろうと思いました。

 近藤さんはそれを少しずつ形にしていった。絵と2カ国語による銭湯の入り方案内を脱衣所の壁に掲示。5カ国語の指差し案内マニュアルを作成した。

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銭湯の入り方を説明したポスター

 入ってきた外国人客を温かく迎えるため、銭湯の入り口には大田区ウェルカムショップステッカーを貼った。

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外国人が安心して飲食・買い物・観光・宿泊できる店舗・宿泊施設などを示す「大田区ウェルカムショップステッカー」

 最近では、銭湯用のウエルカムSENTOステッカーを作成し、全国の浴場組合員に配布している。
 他にも、近藤さんはスマートフォン用の音声翻訳アプリ「Voice Tra」も活用している。これは国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)による無料アプリで、31言語に対応している。「今では外国人客も、入り口である程度説明すれば、問題なく入れます。外国の方のほうが丁寧でマナーがいいですね」と近藤さんは笑う。
 他の日本人客も外国人客を親切に迎えているそうだ。

近藤:話をしてくれたり、桶の使い方を教えてくれたりして、みんな仲良くやっていますよ。訪日外国人客が増えていること、2020年に東京オリンピック・パラリンピックがあることなどがテレビでもひんぱんに取り上げられているので、高齢の方も若い人も、外国人の受け入れをしなければいけないというイメージができているようです。

 日本銭湯文化協会では、フランス出身のステファニーさんを「銭湯大使」に任命した。ステファニーさんはインスタグラムへの投稿などを通じ、外国人の目線で銭湯をPRしている。ステファニーさんを通して外国の人の銭湯への反応を聞くことで、気づくことが多いと近藤さんはいう。

近藤:外国の人は、「銭湯はアート」だと言うんです。洗い場の絵だけでなく、下足箱の木の札も、のれんもアート。銭湯はアートの集まりなのだそうです。そういう目線を大事にしたいと考えています。

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下足箱の鍵は旧式のおしどり錠がつかわれている

 ちなみに外国の人は、他の人と裸になることに抵抗はないのだろうか。

近藤:最初は少し抵抗があるみたいです。それまでの人生で他人と裸になって風呂に入ることは経験していないから、勇気がいるけれど、それは観光客にとって貴重な経験になるとステファニーは言います。一度入ると、これが日本の文化と受け入れることができるそうです。

 今では、はすぬま温泉の利用者のうち2~3割を、居住者を中心とした外国人が占めるようになっている。

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