出前講座「英語少し通じます」で町の商店街に外国人観光客を 東京都品川区

2015.05.18東京都

普通の日本を見にくる観光の時代に

 今、日本中どこを歩いていても外国の方たちに出合う。その観光客の求めるものに少し変化が見えてきたのではないか。定番観光地だけでなく、一歩進んで普通の町へ、そしてそこにいる人の暮らし、日本の文化や日本人そのものへ、と向いてきたのではないだろうか。

 だから、彼らは山間の過疎地にも現れるし、都市部の普通の町にも現れる。また、ビジネスなどで長期滞在する人たちも増えているため、町中に現れるのだ。

 そんな中、東京都心にやってくる外国人を、積極的にそして気軽に受け入れようと、品川区の商店街が「英語少し通じます」を合言葉に新しい取り組みをはじめた。大型スーパーではなく、商店街のお店で日本の生活をのぞいてみたいと思う観光客や長期滞在者はちょっとしたキッカケがほしかった。そして、商店街のみなさんも外国人が増えていることには気づいていた。でもお互いにどうしていいかわからない、最初の一言がかけられない。そんな垣根を取り除くお手伝いがしたいと、品川区の地域活動課が新たな取り組みを始めたのだ。

 そこで、この事業の担当者に、活動の内容と、取り組みの中で商店の方たちがどう変わっていったかをうかがった。

少しの英語さえあれば、おもてなしの心は伝わる

第1回 北品川のお茶販売店で
第1回 北品川のお茶販売店で

 「品川区には観光やビジネスなどでたくさんの外国人が訪れます。区内には地域に根差した商店街がたくさんあり、外国人の方たちも店の中をのぞいていくのですが、なかなか店内に入っていけないようでした。商店の方たちも気付いているのですが、やはり声をかける勇気が出ないという様子があちこちで見られていました。私たちは、少し気持ちを切り替えればきっと大きく前進できるはずと考えたのです」と、プロジェクト立ち上げから関わっている品川区地域活動課の小幡理恵主査は語ってくれた。こんな思いからプロジェクトはスタートした。

 商店街のみなさんは普段は外国語との関わりが少なく、年齢も様々で、会議室で行う「講座」形式ではニーズをとらえきれないと考え、個別の出前講座が考えられた。地域内の商店街に参加を呼びかけるとともに、協力者に相談しながら、会話のモデルになる「台本」を作成、講師スタッフの人選などを進めた。

 初年度の2014年度に参加の手を挙げたのが3エリアの商店街。第1回目の旧東海道周辺商店街では10軒が、2回目は戸越銀座商店街の7軒が、3回目は立会川駅前通り繁栄会の6軒が参加して開催された。青果店、煎餅店、リサイクルショップ、お茶販売店、和洋菓子店、精肉店、婦人服店など、どれも町の商店ばかりである。

 お客様にお店に入ってもらい、最初は日本語でもいいから一声かけられれば後はなんとか続くはず。「もてなしたい」気持ちはみんな持っているのだからという願いが形になっていった。

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