高度人流社会を迎える配車サービスの動向

寺前秀一人流・観光研究所長

2016.02.01

世界中に広まったスマホ配車サービス

 スマホに目的地を入力するとたちどころに経路と時間が表示される。高精度GPSが装備され、Wi-Fiにより、地下・高層ビル等でも使えるから、世界中の大都市で「どこからでも車が呼び出せる環境」になってきた。

 その武器を活用する配車サービスが出現し、世界中でUber等が話題になるのは必然である。当然在来型サービスとの摩擦が発生する。自家用車を活用した配車サービスは「白タク」行為だとして大騒動になる。しかし、日本と異なり、バスやタクシー政策は主要先進国では自治体行政により行われているから、十分にタクシーが配車されていない地区では、利用者がその配車サービスを支持する。したがって市長や議会は政治的に様子を見てしまうから、カリフォルニアのように既存のタクシー会社が倒産するところもあれば、ドイツのように厳しく白タク行為が取り締まられるところもあるのである。

訪日旅行客受け入れにはスマホ配車は必須?

 海外と日本の大都市タクシーの大きな違いは「流し営業」と「車庫待ち営業」の在り方である。ロンドンでは、「車庫待ち」は公共交通機関とは認められず、自家用車の扱いである。この車庫待ち営業は事前に顧客情報が入手でき、サービス内容も事前に確定できることから、スマホ配車の普及が進展しやすい。Addison Leeが普及する理由もそこにある。

英国の配車サービス「アディソン・リー」のアプリ画面。
英国の配車サービス「アディソン・リー」のアプリ画面。
さまざまな車種を選択できる

 日本、特に東京では高度な流し営業サービスが普及しており、スマホ配車の必要性が低い。しかし、スマホ配車の普及した海外からの利用者にとって、自国でダウンロードした使い慣れたアプリによる配車サービスは、キャッシュレス化や言葉の障害を乗り越えた利点があり、東京オリンピック・パラリンピック時にはそのニーズも高まるであろう。オリンピック・パラリンピック終了後は、中国人観光客のビザなし渡航が実現するに違いない。世界最大の人流大国・中国では、スマホ配車が当たり前の時代であるから、東京でもスマホ配車ができない会社は生き残れないかもしれない。

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