高度人流社会を迎える配車サービスの動向

寺前秀一人流・観光研究所長

2016.02.01

定額制ビジネスモデルで総合生活移動産業へ

 私が『モバイル交通革命』で提唱したのは、使い放題定額制ビジネスモデルの普及である。インターネットや携帯料金、通勤鉄道料金は、月極定額制によって普及した。CATVや町のコーヒースタンドにまで、月極定額制が普及してきている。タクシーも月極使い放題制にすることにより、新たなビジネス展開ができるのではないかと考えた。普及するどころか、顧客情報を把握することにより総合生活移動産業に脱皮できるのではないかと考えたのである。

 福岡市で月極乗り放題のジェロンタクシーの実証実験が開始される。限定的ではあるが、私がこれまで主張してきた定額乗り放題タクシーの最初の試みである。これを実施するにあたり障害になっていた、パック旅行に係る特別補償制度に関する旅行業約款の改正ができた。創意工夫を身上とする旅行業において、一般標準約款がむしろその阻害になっていたことは皮肉なことであった。

目的地を2カ所指定し定額乗り放題のジェンロタクシー
目的地を2カ所指定し定額乗り放題のジェンロタクシー

 乗り放題であるから、自宅と病院、コンビニ等の間を何度も往復するのであるが、在宅時の事故等の補償をどう取り扱うかが焦点になった。保険料の問題ともいえるが、一応、在宅時の事故を除外することが可能な約款となっている。この新しい約款を活用すれば、新しい定額乗り放題サービス商品をいくらでも生み出すことが可能となる。まさに旅行業者、あるいは交通事業者の創意工夫が期待されるのである。総合生活移動産業の幕開けである。サードパーティ・ヒューマン・ロジスティックスの幕開けである。

著者プロフィール

寺前秀一

寺前秀一人流・観光研究所長

1972年3月東京大学法学部卒業。 1972年4月運輸省入省。自動車、鉄道、航空、海運等の部署を経験し、1998年6月国土庁大臣官房審議官就任。この時点で日本の鉄道、空港はすべて走破。2001年1月国土交通省総合政策局情報管理部長、2001年6月気象庁次長、2003年1月社団法人日本観光協会理事長、2006年4月高崎経済大学地域政策学部教授、2007年10月立教大学観光学部より観光学博士の学位取得。2009年10月加賀市長(~2013年10月)。 2014年2月帝京平成大学教授、2014年2月人流・観光研究所長、現在に至る。この時点で渡航国・地域は71か所に及ぶ。

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