人とまちをつなぐ『まちの縁側』 観光案内所の新たな形
「観光とは、光を観ること」 北陸新幹線開業を機に議論
「まちの縁側」が地域と観光客の交流の場となる
日本海に面して本州の中央部に位置する石川県。加賀百万石の時代から伝統文化を育んできた石川県は、今年3月の北陸新幹線金沢開業の影響から、春の大型連休の観光客は兼六園で2倍、金沢城公園で3倍に増加しており、秋の連休も大幅な増加が見込まれている。
東京から北陸新幹線「かがやき」利用により最短2時間28分で結ばれるようになり、外国人観光客の姿も目立つ。テレビの旅番組で金沢特集を取り上げる機会も多く、県内を巡る観光客は引きも切らない。
古代中国の書「易経」によると、「観光とは、国の光を観る」とある。私たちが観光に訪れる際に求めるのは、単にネット上で知りえた風光明媚な地に足を運ぶとか、ガイドブックに掲載されている歴史的な遺産を訪ねるといったことではなく、その地の光輝く文化に触れ、まちの個性や魅力に触れることではないだろうか。
そして、心に残ることは、その地での体験や交流にあるともいえるだろう。苦しい坂道を登ったこと、滝の水音を聞いたこと。その土地ならではの味覚を口にしたこと。五感を通して感じたことがいつまでも記憶にとどまる。すべてを理解することは困難な地域の言葉で、地元のお年寄りたちとの会話を楽しんだコミュニケーションこそが、忘れえぬ想い出となっていく。
観光まちづくりを目指して設立されたNPO法人金沢観光創造会議では、北陸新幹線開業前から、新幹線開業後に訪れるであろう多くの観光客の方に金沢を楽しんでもらうためには、どんな方策があるのか、何が必要なのかの議論を重ねてきた。
この中では、機能や利便性が優れているだけの観光案内所ではなく、地元の方と交流ができる拠点が必要ではないかとの考えに至る。行政や外郭団体が開設する「観光案内所」ではなく、地元の住民の暮らしぶりやその地域ならではの魅力を、生きた言葉で伝えることができる場所を、住民の力によって開設できないかと意見が交わされたのである。
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