徳島の「マチ★アソビ」で考えたこと

大谷尚之愛媛大学法文学部人文学科准教授

2013.05.16徳島県

「マチ★アソビ」を開催

 5月3から5日に第10回目となる「マチ★アソビ」が開催され、過去最高の53,000人の来場者を集めた。マチ★アソビとは、2009年から徳島市中心部を主な会場として開催されているアニメイベントである。

 『Fate/Zero』や『空の境界』などの作品を手がけた映像制作会社ユーフォーテーブル(本社・東京都中野区)の近藤光社長が総合プロデューサーを務める。期間中は、声優やアニメ制作会社の関係者などを招いて、トークショーやライブ、上映会など、大小さまざまなイベントが開催される。

 きっかけは、ユーフォーテーブルが徳島市にスタジオを開設したこと。近藤社長が徳島出身だったことから縁が生まれた。ちなみに、阿波踊りのポスターなども制作している。

 近年、アニメやマンガを活用して地域おこしを図る取り組みが増えているが、ここでは、他に例をみないマチ★アソビの特徴をいくつか挙げてみたい。

 一つ目は、アニメ制作会社の社長が中心的な役割を果たしていることである。自社がかかわった作品を中心に、ファンにとって魅力あるコンテンツやキャストを用意することができる。

 二つ目は、単一の作品やキャラクターに依存せず、毎回内容が変わることである。この点は、成功事例としてよく挙げられる『ゲゲゲの鬼太郎』の鳥取県境港市や、アニメ作品の舞台となったことをきっかけとする事例との違いである。

 三つ目は、ミュージアムやモニュメントなど固定的なスポットに人を集めるのではなく、会場の配置やプログラムによってまちなかを回遊してもらう仕掛けになっていることである。「アニメ○×」や「△▽(作品名)フェスティバル」ではなく、「マチ★アソビ」である。まちなかで過ごす時間を楽しんでもらいたいという気持ちが独自性につながっている。

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