人とまちをつなぐ『まちの縁側』 観光案内所の新たな形

加茂谷慎治NPO法人金沢観光創造会議会長、(株)エイチツーオー代表取締役

2015.09.16石川県

「まちの縁側」での交流を目指す

地元、金沢市の山野之義市長も参加して開かれた「コミュニティカフェサミット in 金沢」(2012年7月)金沢市
地元、金沢市の山野之義市長も参加して開かれた「コミュニティカフェサミット in 金沢」(2012年7月)金沢市

 そんな中、2011年に行政と市民が協働でまちづくりを考える「金沢まちづくり市民研究機構」の中で、川上光彦金沢大学教授(当時。現NPO法人金澤町家研究会理事長、金沢大学名誉教授)とともに、「コミュニティカフェ活動による市民協働のまちづくりの促進」と題し、コミュニティカフェの調査研究に乗り出すことになった。

 「営利のみを目的とせず、地域や住民のための活動を目指す場所」「それぞれの店がテーマを持ち、そこを居場所として人々が集う場所」。こうした場所こそがコミュニティカフェであり、地域コミュニティの拠点となる場所であると考えたのである。

 コミュニティカフェを地域住民と観光客の交流の場とすることはできないか。まちが持つ文化や魅力を、訪れる観光客に理解してもらうことが、うわべだけの美しい場所を見る「観光」ではなく、その地の暮らしや文化を知ってもらう真の「観光」につながるのではないだろうかとの思いから、コミュニティカフェ開設の輪を広げる活動の取り組みが始まった。

 2012年7月には、金沢まちづくり市民研究機構が中心となって、コミュニティカフェを開設している方や開設を目指す方、交流の拠点づくりに関心を持つ市民が集まり、「コミュニティカフェサミット in 金沢」が開かれ、事例発表や意見交換も行われた。サミットには、山野之義金沢市長も参加し、人々の居場所であり、新しい交流の場となるコミュニティカフェの拡大に向けて地域を挙げて取り組んでいくことが確認された。

 2013年には、NPO法人金沢観光創造会議が主催して、コミュニティカフェ開設講座を開き、交流の拠点を開設したいとの思いを持つ方に、必要な知識を伝え、すでに開設している方々のネットワークづくりも行い、情報交換や悩みを共有できる仕組みをつくった。ゲストスピーカーとしてお招きした名古屋市のNPO法人まちの縁側育くみ隊代表理事の延藤安広さんからアドバイスをいただき、地域の中にある縁側のように気軽に集える場所を目指すという思いも込めて「コミュニティカフェ」の呼び名を「まちの縁側」に変えて、さらに多くの方を巻き込む活動として広がっていった。

 「まちの縁側開設講座」はその後、金沢市で毎年講座を開いているのをはじめ、東京都文京区や福島県、福井県、富山県でも講座を開く機会があり、これまでに受講した方のうち20人ほどが、実際に「まちの縁側」の開設にこぎつけた。

 この中には、観光客と地元の住民との交流をテーマに掲げるものもあれば、福祉介護の分野で認知症の方のケアに主眼を置いた「認知症カフェ」や、地元のクラフト作家の作品を紹介する「クラフトカフェ」もある。こうした幅広いテーマを持ち、多様な人々が集う場もまた「まちの縁側」の魅力となっている。

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